京都四条烏丸、滋賀栗東小柿の鍼灸院。2022年導入の最新式高性能レーザーをどこよりも受けやすい治療費で。不妊症、突発性難聴、円形脱毛症、顔面神経麻痺、各種運動器疾患で本院過去5000人以上の新患、毎年8000人の施術実績。

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育卵治療(劣化防止〜卵質向上)

採卵成績向上のメカニズムは?
〜専門的なお話〜

  さて、卵子は排卵の準備に入ると、成熟卵胞に変化するまで数ヶ月間を必要としますので、その間に卵子の質を向上させることができないかと苦慮しました。そこで「育卵」という概念に到達しました(詳細後述)。当然この研究にも、極めて根気のいる観察を要します。いわゆる後方視的観察研究(Retrospective Study)という手法ですが、過去の膨大な症例を、いろんな要素で分類分析し、それに傾向を発見し、その傾向が未来にも持続するか観察を行います。その際に治療法を更に合目的化させ、前方視的観察研究(Prospective Study)に繋げます。一つひとつの検証に最低数年間を要します。不妊症に対する鍼灸治療は、それほどの長期間の検証を必要とします。漠然とした体質改善と称して行われている治療法では、その検証すら不可能です。

 当院では不妊治療において、平成16年頃より東京医研社製のスーパーライザーという機器を使用しています。この機器は今や不妊治療のスタンダードになりつつありますが、当院が全国的な講演活動によって、知る限りだけで約五十軒の鍼灸院が導入されました。従って当院は、そのさきがけとしてもっとも長い間使用しているわけですから、治療に精査を繰り返し、有効な手法を発表し続けています。

 この機器の使用にはいくつかの目的があります。1,交感神経抑制。2,局所血管拡張効果。3,卵巣の損傷修復効果。4,自律神経免疫相関を整えること。(詳細は「不妊とスーパーライザー」のページをご覧ください。

 さて昨今、卵子の劣化における染色体異常の仕組みがいろいろと議論されています。卵子内のミトコンドリアの減少や相同染色体をバインディングするコヒーシンの機能不全が問題となっていますが、35才以上の卵子では以前より紡錘体の異常率が上昇する事が知られています(注1)。これらはすべて卵子の栄養状態の低下で起こります。従って当院では様々な手法を駆使して、卵子への有機物の供給を推し進めています。それには、顆粒膜細胞と卵子の間で分子量千以下の物質の能動輸送を行うgap junction(ギャップジャンクション)の働きが重要であり、そのために次の手法を採用しました。

  1. 卵巣血流量を有意に増加させた施鍼手技
  2. 同条件下で採卵数の増加を示した陰部神経施鍼
  3. 子宮血流量を有意に増加させた施鍼手技
  4. 上記の効果を最大限に増幅するためのスーパーライザーの活用
  5. 刺激に対する慣れを除去する施鍼方法

 これらの基礎研究を基に、一人ひとりに最適な方法を組み合わせます。

 さて現在特に重要視されているのが、卵子内ミトコンドリアの減少です。ミトコンドリアは全ての細胞に含まれていますが、これは特殊な細胞小器官で、太古の頃、原核生物が真核生物に寄生したのが始まりです。つまり彼らは私たちの体の中で勝手に住んでいるのです。腸内在菌もそうですが、腸内は外界と通じていますが、こちらは細胞内部ですのでまったく閉ざされた系の中で、母から子へ、母から子へと何億年と受け継がれてきました。このミトコンドリアは独自のDNAを有し、私達の遺伝子とはまったく異なる振る舞いをします。通常、細胞分裂には限界があり(テロメア長に依存するヘイフリック限界)ますが、ミトコンドリアのDNAは環状であり、分裂限界は存在しません。通常、微生物は適切な環境では一定程度の繁殖状態を維持しますので、ミトコンドリアという微生物がなぜに卵子の中で、経年的に減少していくのか、それは環境の悪化と考えています。その環境とは、ミトコンドリアの働きに不可欠な有機物(糖)の減少またはミトコンドリアの構成要素である有機物(アミノ酸〜タンパク質)の減少ではないかと考えています。

 そこで、卵子の劣化に話を戻せば、染色体不分離による数の異常(モノソミーやトリソミーなど)が、紡錘体(微小管)やコヒーシンの劣化で起こり(両方共タンパク質でできている)、ミトコンドリアの減少が受精卵の卵割の早期停止に繋がるなら、それらはすべて卵子内の栄養不足から来るからではないかと考えるのです。

 さらに当然のこととして申し上げるなら、卵子の減数分裂は、胎生期から思春期以降の排卵まで、第一減数分裂の途中で停止したままで、染色体の不分離は決して早期に起こっているのではなく、いざ分離しようとするときにその機能不全が様々な物質不足で起こると考えるのが至当だと思います。

 もう一つ付け加えるなら、極体放出のための細胞内における核の偏位は細胞骨格であるミオシンなどのモータータンパクの働きによりますが、これが欠乏すると極体放出がうまくいかないのではないかと思います。そしてミオシン、中間径フィラメント、微小管といった細胞骨格は全てタンパク質によって出来ており、ここでもやはり細胞内で大切な振る舞いをするタンパク質が重要な鍵をにぎるのです。

 そこで、前述のgap junctionは、顆粒膜細胞と卵子の間にある細胞接合の一種ですが、ここでは分子量1k以下の物質の能動輸送が行われています。ブドウ糖はもちろん、アミノ酸の最小分子であるグリシンから最大分子であるトリプトファンまで、全て分子量は1k以下であるので、エネルギー源や細胞の構成要素となる物質が卵子内に大量に流入しているはずです。さらにミトコンドリアがこのgap junction付近にまで進出してくることも知られています。

 ところでミトコンドリアは、私達の理科の教科書では二重膜構造をした俵のような形が書かれていますが、実はもっと細長く、動き、そして離合集散を繰り返しています。元はといえば原核生物なのですから、自動性があってしかるべきでしょう。

 さてこのような学習から「育卵治療(卵子の劣化防止、卵質向上)」の基本概念を作り上げましたが、ではその治療効果を最大限に発揮するのはいつごろでしょうか。卵子の大きさは、原始卵胞の段階で直径が0.03ミリメートル(1)、排卵周期の月経のころに0.1ミリメートル(2)、排卵頃には0.14ミリメートル(3)くらいになります。また長い成長過程で、卵子が自らマクロピノサイトーシスによる発育を進め(1〜2)、顆粒膜細胞が卵子の周りに付き始め(2)、gap junctionによる能動輸送が機能し始めてから、莢膜細胞によって卵胞が完成する(2〜3)までの約3ヶ月以上、言い換えれば、排卵周期の3ヶ月以上前からがもっとも卵子への栄養供給を効率的に行える期間だと考えました。それを実際に平成28年に入り、採卵成績の経時的変化をデータ化してみると、まさにその仮説とデータが一致したのです。これにより、「育卵治療」は、試行から治療へと進化し、極めて高い再現性を有する段階に入りました。

 さて毛細血管からは通常1割程度の血漿成分が血管から漏出し、リンパ管に回収されていきます。このリンパ管の存在パターンにはいくつか有りますが、通常臓器の深いところにリンパ管は存在します。血管から漏出し付近の細胞に入り、またそこから出た血漿を回収するためです。ところが例えば卵胞には毛細血管は分布していますが、リンパ管は分布していないのです。これの意味するところは、卵胞が血液の「血球」成分、「血漿」成分の全てを必要としているのではないかということです。血漿は水以外にはまずタンパク質を多く含み、他に脂質、糖質、無機塩類を含みます。卵胞にこれらを回収するリンパ管が隣接していないのは、結局、卵胞や卵子の成熟には多大な栄養が必要とされるからではないでしょうか。

 しかもこの卵巣は腹壁から大体深さ8センチにあり、外から温めたくらいでそこまで熱は到達しません。そこで、自律神経支配を利用した正しい鍼の技術、そして当院ではスーパーライザーを使用して、確実に卵巣動脈の拡張を図ります。

 さて平成25年から、卵巣の深さのみに作用する超音波治療機を導入しましたが、その当て方、対象となる状態を精査するのに2年以上かかり、ようやく未成熟卵の多い人に有効なデータが出始めています。いつかその有効性を証明できれば、新たな切り口で卵子の質の向上に繋がるでしょう。

<生殖よもやま話>

 さて毛細血管からは通常1割程度の血漿成分が漏出し、リンパ管に回収されていきます。このリンパ管の存在パターンにはいくつか有りますが、通常血管のあるところにリンパ管は存在すると言われるように、血管から漏出した成分を回収するために、リンパ管の多くは毛細血管と伴走しています。そうしないとその部分に水腫や浮腫が発生するからです。ところが例えば卵胞には毛細血管は接していますが、リンパ管はそうではなく、卵胞を網目状に取り囲み、卵胞の成熟に際して過剰な組織液のみが排出されるようになっています。排出された組織液は、髄質の集合リンパ管に集められて卵巣外に排出されます。これの意味するところは、卵胞が「血漿」成分を多大に必要としているということです。血漿は水以外にはまずタンパク質を多く含み、他に脂質、糖質、無機塩類を含みます。リンパ管が隣接していないのは、結局、卵胞や卵子の成熟にはこれら多大な栄養が必要とされるために安易に回収されては困るのでしょう。また卵胞に直接接すると、組織液の回収が速やかすぎて、卵胞内が陽圧にならず、膨張しないからと思います(卵胞は形態的には「水腫」「水泡」である)。これが膨張し陽圧にならないと、正しく排卵(卵胞という袋がはじけて、組織液とともに卵子が排出されること)されないと思われます。そのために、卵胞腔の陽圧でじわじわと漏出した組織液のみを、遠巻きにリンパ管が集めているのでしょう。

 次に、ミトコンドリアは「母から子へ、母から子へ」受け継がれるという話をしました。実際にミトコンドリア遺伝病というものがあり、これは必ず母性遺伝をします。父からは遺伝しないのです。では、精子にミトコンドリアは含まれていないのかといえば、決してそうではありません。精子の尾部は鞭毛を盛んに動かして直進するので、推進に十分なエネルギー供給するために中間部には沢山のミトコンドリアが存在しています。しかしその部分は卵子の中には入りません。ですが、実は頭部にもミトコンドリアが含まれているのです。しかし受精後、精子頭部が崩壊し、核と共に卵子内部に流出したミトコンドリアは、卵子にとっては自分のミトコンドリアと異なるために、外的とみなして破壊してしまう(オートファジー)のです。同じミトコンドリアなのに、自己と非自己を見分けて排除してしまう卵子の免疫ってすごいですね。

(注1)の研究

1996年 テリー・ハッソールド

 染色体の分離は、卵のプール(貯え)の規模による。卵を取り囲む細胞がホルモンを分泌し、月経周期を支える。そのレベルが下がると閉経が始まる。同様に、紡錘体形成その他、減数分裂が影響を受け、染色体の分離に支障を来す。

1998年 パトリシア・ハント

子宮摘出や卵管結紮を受けた18〜55才の女性から卵子を摘出。試験管内で成熟させ減数分裂を誘発した。紡錘体の異常が、35才以上で頻発(約7倍)し、結果染色体の数の異常は、35才以上はそれ未満に比し2倍の頻度で起こった。

 では育卵を実現するための手法ですが、様々な論文を査読し、次の方法が理にかなっていると考えられました。少し長いですが、ご説明します。

ラットにおける実験で、下記の事が判明しました。(なお対象はラットであり、ヒトではないので、まったく同じ結果が得られるとは限りませんが、実験の対象にラットを選んでいるのは、ヒトと類似点が多いからと、論文には記載されています)

まず、ラットに与える刺激として、後蹠(後ろ足)に対して30秒間、ピンチ(挟んで痛みを伴う)、温熱刺激(49度)を当該部位に与えると、交感神経を介して、卵巣の動脈血流量に変化が現れました。それは、一旦血流量が低下して、その後に元の状態より有意に血流量が増加していることが読み取れました。
そしてこれらの刺激を与える前に交感神経を遮断すると、二つの刺激によって、卵巣血流量が低下すること無く上昇し、最大で3割増加することがわかりました。
しかしこの二つの刺激の代わりに圧刺激を与えた場合は、上記二つの刺激同様に卵巣血流量が一旦低下しましたが、上記と異なるところは、その後に元の状態より血流量が増すことはありませんでした。また交感神経を事前に遮断しておいても、結果は変わりませんでした。

また、交感神経は通常血管の収縮作用を持ちますが、ラットの卵巣に分布する交感神経(下腹神経)は、実はストレス下における過度の動脈収縮を抑制する作用を持っています。つまり、本来なら極度に狭窄を起こす状態で、それを少なく抑制し血流を確保する作用もあるのです。そして、体性交感神経を遮断して、なぜ交感神経を介した刺激が有効であるのか、ですが、それはこの刺激が中枢でなく、脊髄分節のみを介しているからです。下肢から入った刺激は、脊髄に入り、そのまま卵巣動脈へ影響を及ぼすというわけです。

さて、これらからわかることは、交感神経を介した卵巣への自律神経(下腹神経)を介した血流調節は、刺激直後に若干低下するものの、その後に回復する、それが交感神経遮断により大きな効果を得られるということです。

ここで、もうひとつ考えなければならないのは、実験環境です。ラットがこのような実験を受けている時には四肢を拘束され、極めてストレスの強い状態を強いられているはずです。かたやヒトが鍼灸を受けるときには、それとはまったく正反対のリラックスした状態となります。つまり、鍼灸受療中には、交感神経はかなり抑制されている状態にあるということです。

では副交感神経を有意にすると言われる鍼灸の効果はどうかといえば、ラットに関して言えば、卵巣に分布している副交感神経は、迷走神経から分岐した骨盤神経ですが、これに刺激を与えても血流量は増加しませんでした。つまり副交感神経を刺激しても期待薄ということになります。

さて、次に鍼灸の手技はいかなるものが有効なのでしょう。後蹠(後ろ足)に与える刺激に代わるものとして、ラットの下腿にパルス刺激を与えた実験があります。この実験では、電圧とパルス頻度をいろいろ変えて、第Ⅰ群から第Ⅳ群の神経線維のどれが刺激されているかを調べたものです。ここでは一定程度の電圧とパルス頻度により、第Ⅰ〜4群全ての神経線維すべてを刺激することができる条件が得られました。

以上の事から、私達の治療の注意点が見えてきます。

それは、

1,治療前に交感神経を抑制しておくこと。これには星状神経節へのレーザー照射(交感神経節ブロック)がもっとも簡便且つ効果の保証された方法であると考えられます。また鍼灸では、交感神経抑制効果が証明されている正しい手法を用いること。また治療開始前にリラックスできる環境を作ること。
2、下肢のパルスの強さと早さに注意すること。

この二つの条件を満たした時に、卵巣血流量が増加すると考えられます。そして現段階では、これが科学的に考えられる最善の鍼灸不妊治療であると言えますし、その手法は再現性を最大に重視した当院の治療と酷似しています。今、論文を収集してこれを書いていて、治療方針や手順に誤りはなかったと自信を持っておすすめできるのです。

 

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