私中村が平成19年ころに左耳を患い、殆ど聴力を失ってしまった事、そしてそれを鍼灸とレーザーで改善させた事は他のページもにも書きました。その頃から、耳疾患の治療を積極的に行うようになりました。平成28年3月現在、突発性難聴の新規外来数は三百人を超え、メニエルは百人を超えました。他に、頭位変換性めまい、ハント症候群、ムンプス難聴などに加えて、難聴の後に様々な症状(耳鳴りや耳閉塞感など)のみが残る場合など、いろんな方々が来院されています。
どの疾患でも言えることですが、鍼灸が最も効果を発揮するのは局所の血流改善と自律神経の調整及び免疫機能の正常化です。
しかし、こと耳疾患について言えば、鍼灸だけで内耳の血流改善を達成するのは非常に困難です。なぜならば内耳は外耳道の奥の中耳の更に奥にあり、その部位まで鍼を刺入するなどという危険なことは到底できないからです。体に鍼をするとフレア反応といって鍼をしたところの周囲直径2〜3センチに発赤が見られることがしばしばあります。言ってみればこれが鍼による局所毛細血管拡張の領域であろうと思います。よって鍼をする部位からの距離、また特殊な構造組織の問題を考えると、内耳の深さで血流を改善するのは、そう簡単ではありません。そうしますと昔から耳に良いと言われる経穴(ツボ)に鍼をすることしかできないことになります。それだけで効果がないとは言いませんが、そんな時にレーザーを使用するのは非常に有用と思われます。鼓膜は非常に薄いもので(写真1は私の鼓膜です)、簡単に光を透過しますので、外耳道にプロブを挿入し、レーザー光を照射しています。また耳周辺からも内耳に向けてレーザーを照射します。理論的には内耳まで光は到達しており、それが当院における耳疾患の治療の中心となります。
さて、耳鼻科疾患を診る上でも絶対に必要なのが客観的評価です。当院では2012年からオージオメータで計測していますが、2024年より新たに計測範囲が広い機器に変更しました(250〜6000Hz、70〜-15db)。これは気道計測のみですが、耳鼻科の無音室での検査結果と遜色ない正確性を持っています。これを積極的に活用し、改善する方にはしっかりとその経過を観察し、変化が見られない方には無駄な通院を長引かせないように務めています。
また計測不可能な愁訴(耳鳴り、閉塞感、自声強調、補充現象など)については、初診時の状況を把握し、常にそれと比較しながら治療を行うようにしています。
また平成28年に入り旧来の知己である、堺市の森克己医師の「もり耳鼻咽喉科」において、念願の研修を受けました。
- 鼓膜の観察(耳鏡とファイバースコープで)の実際と鼓膜の解剖生理学的意義
- オージオグラムの理論と実際(気道、骨導)
- ティンパノメトリーの理論と実際
- 耳管の構造や機能
- 突発性難聴やメニエルの昨今の見解
- 当院のデータをお見せして意見を求める
などのレクチャーを受けました。それはもちろん今後の皆様への説明や治療法に、新たな視点を生み出してくれると思います。