最近の日記

網膜動脈分枝閉塞症

当院に通院されていてご懐妊に至った方が、久しぶりにお電話下さったと思えば、標記の病気を発症されたとのこと。

臨月に入って、急に眼が見えにくくなり、大学病院にて上記の診断を受けられた。調べて行くと、この疾患にはスーパーライザーが効果的とのことで、

「あれ?その機械、聞いた事あるな、、、なんだっけ?
 そうだ、鍼治療で受けていた。」

と思いだして来院。
(ネットで調べると、本疾患にSLを使用している眼科のなんと多い事に驚かされた)

他の血液検査、眼底及び脳の血流造影検査など一通り受けられ、原因不明との事。血圧も正常、妊娠状態もいたって良好。

(余談になるが、鍼灸が着床障害を免疫寛容で改善するとしたら、妊娠高血圧は有意に減少すると考えている、、、ので、それを聞いてほっとした次第)

そこで、スーパーライザーと(網膜血流量に有意な改善を某大学病院の眼科が証明した)鍼灸治療で、なんとか出産までこぎ着けたい。

医師は、妊娠中でもあり手を出せないとのたまったとの事なので、こりゃ私たちの出番でしょう!!

網膜が、出産時の急激な血圧変動に耐えられますように!
医師の検査結果と付き合わせながら治療をプログラムすることに。

WHOは白内障に鍼灸が有効としており、また当院では緑内障の眼圧の抑制例もあるので、全力をつくすべし。生まれてくる我が子をしっかりと見られるように!!

パンダの親指

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スティーブンジェイグールド著「パンダの親指 進化論再考」について。

鍼灸に不妊治療を求めて来院される方が大勢おられる。

鍼灸は東洋医学であるが、不妊の原因がある程度推測される場合には、私は出来るだけ合目的的な治療を心がける。

例えば卵子の質。

高度生殖医療において顕微鏡で判別できる卵子の質は、多くの場合染色体の状況(極体の有無)から判断された成熟未成熟の区別であろう。しかしながら卵子の質を論じるなら、もうひとつ細胞質の質を避けて通る事は出来ない。

排卵される4ヶ月前から変化し始める卵子(正確には卵子の付随物としての卵胞ー更に言うなら卵子を取り囲む細胞群の増加と発達)が、初期胞状卵胞に至る前の体積の増加率、そこから排卵に至るまでの増加率を視野に入れないわけにはいかない。

初期胞状卵胞の以前と以後で分けたのは、顆粒膜細胞の増加と卵胞形成の過程による。それに関する議論は日を改めるとして、卵子表面は特殊な細胞接合により栄養供給を受ける。分子量千以下が基準と言われている。ならば卵子への栄養供給がもっとも効率的に行われる時期はいつか。

例えば体外授精における採卵で、その直前に集中して治療することは、前段のしくみから考えると左程卵子の質の向上に効果的ではないと言える。

卵子の質の向上にもっとも効果的な時期と方法は何か、それが頭から離れない。

そんな時、冒頭の書物にであった。

私たちは臨床を行いながら、しかしその結果を常に精査し続けなければ、新たな答えを導きだす事は出来ないし、その思考と方法が進歩する事も無い。

生殖と言う生物の生き残りをかけた最も大きなプロジェクトが、どんなコンセプトで種によって異なるやりかたで完成されているのかは、実はかなり俯瞰的なものの見方を必要とする。

産婦人科の専門書でも、細胞生物学の専門書でもなく、
「生き物はどうあるべきか、なぜそのような仕組みを持つに至ったか」
を考える時、始めて
「そうなっている」
のではなく
「そうなるべくしてなった」
ことが理解できるのであり、
それが未知の領域において、
「こうあるべきであろう」
という推察を生む。

そういう意味でこの書物は、生き物の仕組みの根幹を教えてくれるまるで指南書のような役割を果たしている。

中には私たちの臨床の心構えを示唆するような金言名句で溢れている。

ごめんね、納豆

納豆は、日本の伝統的な食べ物として、
その見栄えと臭いの悪さをものともせず、
私たちの食卓ではトップランクに君臨する。

ところが納豆に申し訳なく、
私は生卵を混ぜないと納豆を食せないでいた、
なんとこの40数年間も!

ある日家族で旅行に行き、
ホテルに泊まった時、
ー昨今のホテルはあのサルモネラ菌騒動から生卵を出さないー
仕方なく卵無しで、朝食で納豆を食べる事になった。

するとどうだ。
思っていたほど臭くなく、まずくなく、
どころか、日本人に生まれて良かったとさえ思える美味。

臭いと見栄えで食わず嫌いだった自分が情けない。
いや、40年余もなんともったいない事をしたんだろう。

誤解していました。

ごめんね、納豆さん。