読書感想文

風姿花伝

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本日、草津に初診で来院された男性の方。
大学時代は能楽部だったとのこと。

実は、世阿弥の風姿花伝は私にとって座右の書のひとつ。
自分の成長に、従業員の教育に、誠に示唆にとんだ一冊である。
能という芸事を越えて、あらゆるものの習得に普遍的な一冊。

岩波文庫から出ているのだが、その番号が1−1なのだ。
つまり、おそらくまっさきに文庫化したと思われる。

薄っぺらな本なのに、熱い厚い内容が詰まっている。

パンダの親指

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スティーブンジェイグールド著「パンダの親指 進化論再考」について。

鍼灸に不妊治療を求めて来院される方が大勢おられる。

鍼灸は東洋医学であるが、不妊の原因がある程度推測される場合には、私は出来るだけ合目的的な治療を心がける。

例えば卵子の質。

高度生殖医療において顕微鏡で判別できる卵子の質は、多くの場合染色体の状況(極体の有無)から判断された成熟未成熟の区別であろう。しかしながら卵子の質を論じるなら、もうひとつ細胞質の質を避けて通る事は出来ない。

排卵される4ヶ月前から変化し始める卵子(正確には卵子の付随物としての卵胞ー更に言うなら卵子を取り囲む細胞群の増加と発達)が、初期胞状卵胞に至る前の体積の増加率、そこから排卵に至るまでの増加率を視野に入れないわけにはいかない。

初期胞状卵胞の以前と以後で分けたのは、顆粒膜細胞の増加と卵胞形成の過程による。それに関する議論は日を改めるとして、卵子表面は特殊な細胞接合により栄養供給を受ける。分子量千以下が基準と言われている。ならば卵子への栄養供給がもっとも効率的に行われる時期はいつか。

例えば体外授精における採卵で、その直前に集中して治療することは、前段のしくみから考えると左程卵子の質の向上に効果的ではないと言える。

卵子の質の向上にもっとも効果的な時期と方法は何か、それが頭から離れない。

そんな時、冒頭の書物にであった。

私たちは臨床を行いながら、しかしその結果を常に精査し続けなければ、新たな答えを導きだす事は出来ないし、その思考と方法が進歩する事も無い。

生殖と言う生物の生き残りをかけた最も大きなプロジェクトが、どんなコンセプトで種によって異なるやりかたで完成されているのかは、実はかなり俯瞰的なものの見方を必要とする。

産婦人科の専門書でも、細胞生物学の専門書でもなく、
「生き物はどうあるべきか、なぜそのような仕組みを持つに至ったか」
を考える時、始めて
「そうなっている」
のではなく
「そうなるべくしてなった」
ことが理解できるのであり、
それが未知の領域において、
「こうあるべきであろう」
という推察を生む。

そういう意味でこの書物は、生き物の仕組みの根幹を教えてくれるまるで指南書のような役割を果たしている。

中には私たちの臨床の心構えを示唆するような金言名句で溢れている。

病理診断について

晴れ

先日、友人が本を出版したとの知らせが入った。

話は離れるが、先日、メディカルトリビューン紙で、IBS(過敏性腸症候群)の患者の脳に密度の変化が見られるという記事を見つけた。しかしながらその記事では、「当該疾患患者の脳がそのように変化するのか、元々そういう脳の人がIBSになるのか、まだ結論は出せない」というような事が書いてあった。

また、昨年のメディカル朝日(だったか?)に、IBS患者の大腸に形態異常が高確率で見られる、という記事があった。

西洋医学的には難治とされるこれら機能性疾患に、器質的変化を見いだそうとするのは自然な考えかもしれないが、鍼灸医学では、IBSは決して難治ではない。
http://www.togoiryo.jp/naika.ibs.html
これを読まれた方が、何人もその後に来院されているが、有効率は極めて高いと言える。

さて、同様に西洋医学的な病理に異を唱えたい疾患がある。それは良性発作性頭位変換性眩暈である。耳鼻科疾患の範疇で、これは耳石剥離説が有力である。しかしそういう器質的な病変を伴うなら、どうして鍼灸がほんの数回の治療でこの病気を改善しうるのか、説明がつかない。少し前の耳鼻科の書物によると、この疾患は耳石の剥離ではなく、耳石のスライド(?)による過放電現象になっていたと記憶している。

この方が説明がつきやすい。

さて話を戻そう

西洋医学では病理診断というのは極めて重要な役割を担っている。病理無くして原因究明はなし得ない。

では実際に病理診断とはいかなるものか、それが気になり始めた時、友人の知らせが届いた。

http://researchmap.jp/enodon/

極めて優秀且つ謙虚な彼からこんなメールが来た。

「本当に基本的なことしか書いていないので、お役に立てるかはわかりませんが、病理医がどのような仕事をしているのかがわかるかと思います。」

との事。彼の言う「基本的」というレベルはどんなものなのか?恐怖である。
そして私のIBSのページを読んで、

「ご紹介いただいたページも拝読させていただきました。ご活躍、私にとっても大変刺激になります。どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。」

という感想をもらった。

とにかく早速注文した。

非常に楽しみである。彼とよく飲んでいた頃を思い出して読もう。
しっかしカラオケに行ったときの彼の歌声はすごかった!!
なにせガンズ&ローゼズを歌うんだから!!苦笑。