日々の診療の様子をお伝えします
妊活支援団体で「NPO法人Fine」というものがあります。
この団体国内最大の団体で、今妊活中の人を支援し、
また今後、妊娠に苦労する人が減るように、
更には妊活を終えた人がその後の人生が有意義になるように、
実に様々な取り組みを行っています。
学校教育に妊娠に関する教育を盛り込むように、
尻の重い文部科学省に強く働きかけて、
それを実現させる大きな原動力となった団体でもあります。
大体、少子化が叫ばれて久しいのに、
これほど民間から突き上げないと動かない政府って、
一体なんなんでしょうね?
さてそのFineが運営するサイト「nin」において、
私たち不妊鍼灸ネットワークがブログ執筆を依頼されました。
理事長の松本様は以前、本会研修でご講演頂き、
また他の研修も見聞頂き、本会の質を認めて下さいました。
そして今回の依頼を頂きました。
初回は、私が担当させて頂きました。
http://www.nin.club/plus/ninkatsu-to-hari-kyuu
コンセプトは、
1、鍼灸が不妊の原因によって、有効に作用する事の周知。
2、どうして効くのかを一般の方々に分かりやすく説明する事。
またそれにはどんな手技が必要かを理解頂く事。
3、2の知識を備えて頂く事によって、ちまたにあふれる
「不妊専門鍼灸院」や「不妊を得意と標榜する鍼灸院」の中から、
優良な院を選ぶ基準として頂く事。
また現在通院中の院があるなら、
そこできちんとした治療を行っているか、
その判断材料として頂く事。
4、そしてもちろんの事ですが、子供を欲しいと願う方々が、
良い選択をされ、良い結果になる一助となること。
私たちの学習研究は大きく細やかに、長期間にわたって行われます。
いわゆる retrospective cohort study
と呼ばれるものです。
それを行うには、カルテを詳細に記録する事、
そして治療内容と結果に一定の傾向を感じたら、
他の治療法との比較、また鍼灸が介入していないデータとの比較、
それを何年分ものカルテを調べ上げてデータ抽出します。
そして今度は、その手法が真に有効であるか、
未来に向けて検証を開始します。
そうして着実に効果が出た場合、それを発表します。
卵巣動脈における血流増加、と一口に言っても、
膨大な資料が存在します。
子宮動脈への血流量増加にしても、大変な研究です。
着床率上昇について治療毎に傾向を把握するだけで、
気が遠くなるような分析を必要とします。
一つ一つ、それだけで何年間も必要とします。
それらの詳細を述べるには専門的すぎますが、
このサイトではまず鍼灸入門講座として頂ければと思います。
第2回は、当ネットワーク学術部長木津正義先生が担当予定です。
私たちは何年間、いや十数年かけて効果の検証を続けています。
そのたゆまぬ努力に誇りを持っています。
どうか、皆さんが良い鍼灸を受けられ、希望を叶えられますように。
そう願って止みません。
ところで昨年3月に本会(不妊鍼灸ネットワーク)が、
この京都の地で「第1回公開講座」を開催しました。
会員はもとより、会員外でも北海道から鹿児島まで、
全国から百人以上の不妊を学びたい鍼灸師が集いました。
朝10時から昼食時も休まず5時まで7時間ぶっ通し。
極めてレベルの高い講義と実技供覧が行われました。
来年3月には第2回が開催されます。
また日本中から真剣な先生方が集まられるでしょう。
今年は、醍醐渡辺クリニックの院長と培養室長が登壇予定です。
とんでもない話しを持ち込んで下さる予定で、
今からワクワクします。
先日の事。
夜の8時にキャンセルが出たので、9時の患者さんにご連絡。
もし早く来られるならと思ったのだが、電話に出られなかった。
なのに、、、8時に、、、「こんばんは」という声。
そうなんです。
連絡がついてないのに、この方は間違えて8時に来られたんです。
「Uさん、今日のご予約が何時と思っておられましたか?」
手帳を開くと
「あ!1時間間違えてしまった!しまった!」
「いえ、ちょうどいいんです。
この8時だけキャンセルが出たので、
先ほど連絡させて頂いたんですが、
電話出られなくて、、、。」
「え〜っ?そうなんですか?それはなんとラッキーな!」
と、うまく治療を受けて頂けました。
そうしたら今日、草津で11時のみ空き時間があったのですが、
来週日曜の11時にご予約の(またイニシャルが同じ)Uさんが、
「おはようございます」
と来院。私たちは目を丸めてびっくり。
「予約券お持ちですか?」
「はい、あれ? 来週だった、、、(笑)」
「いえ、ちょうどここだけ予約が空いているんです。」
「え?そうなんですか?てっきり今日だとばかり、、、」
ということで、これもうまく治療を受けてもらえたのでした。
ということで、こちらもめでたしめでたし。
イニシャルがお二人とも「U」というのが、これまたびっくりです。
着床障害ってなんで起こるんだろう?
いろんな理由が推測されるけれど、原因の一つに免疫の過剰反応がある。そう、いわゆるアレルギーってやつ。授精卵は、母由来のnと父由来のnの染色体を合わせて2nとなっている。それはもはや母親の細胞とはまったくの別物。それが透明帯をでて内細胞が子宮内膜に接した時に、子宮が拒絶反応を起こしているかもしれないって事。
Rh+とRh−の両親の間に妊娠が成立すると、1人目は出産するが二人目は必ず流産(という言葉を使っておく)する。それは異なる因子に対する抗体が出来上がり、二人目の時は授精卵を攻撃排除するからと言われている。アカゲザルの英名の頭文字からとったこのRhという因子が、妊娠には免疫が働くという事を私たちに教えてくれた。
さて抗体は全部で数百億種類あるといわれている。その種類を網羅する観察は不可能だ。ならばいずれかの抗体が働けば、授精卵も排除されうる可能性を否定出来なくなる。たかだか23対の染色体がもつ2万ほどの遺伝子が、どうして数百億もの種類の抗体を作り出せるのか、それは非常に複雑なプロセスによる。そのプロセスとは遺伝子の組み換えである。それを発見したマサチューセッツ工科大学の利根川進教授は、その功績でノーベル賞を授与された。私たちの生物の基本概念を覆す大発見であった。
さて、アレルギーには実は自律神経が影響を及ぼす事が知られている。例えばリラックスするとぜんそく発作が起きにくいとか、親に叱られると子供のアトピーが悪化するとか、落語を聞くと関節リウマチに良いとか、そういう例はいくらでもある。そのメカニズムを、大阪大学科学技術振興機構が発表した。しかしこれを読み解くには、大変深い基礎学習が必要で、目下それに取り組んでいる。
さて当院では交感神経の抑制に星状神経節への低出力レーザーを利用している。体外授精での胚移植周期に入る少し前から、来院の度に必ずそれを行っている。今年のお盆に出したデータでは、その手法が着床率を上げる事が示唆されたが、次のお正月のデータ整理でそれを証明したい。
最近の例で言うなら、それを当て始めたら10年以上のアッルギー性鼻炎が収まった、とか、職場での化学薬品アレルギー(くしゃみの連発)が無くなったとか、実はそういう方は胚移植に成功する人が多いのです。まわりくどい言い方ですが、他のアレルギーが沈静化していると妊娠しやすいって事を最近よく感じます。
レーザーは非常に高価な機械です。一台250万円。それを当院では、毎回追加料金無しで受けて頂きます。当てたり当てなかったり、それは薬を飲んだり飲まなかったりするのと同じで、効果が持続しないからです。
一度当てただけでずっと何かの効果が続くなんてことはあり得ません。そんな魔法は存在しません。レーザーを使用し始めて20年。どこよりも豊富な検証から得られた結果です。
その理論と効果を年明けに仙台で発表します。今は免疫学の勉強に必死です。