日々の診療の様子をお伝えします
本日通院中の方が、
「今診察終わって無事着床してました!
まだまだ安心はできないですがとりあえずほっとしています。」
というメールが。
この方は1人目を授かるのにすごくご苦労されていて、当院に長い間通院されていました。2年半もかかり、採卵数回、しかし未熟卵が多く胚盤胞に滅多に到達しない。が、最終的に得られた胚盤胞でご懐妊、ご出産となった。
ところがそれから時を経て、昨年の秋に「もう1人」と言ってお越しになった。
「え?またあの闘いに戻るのですか?」
と、その人の勇気と決断に驚きながら、とりあえず3ヶ月間通院して頂き、その後に採卵したら、、、なんと1回目で胚盤胞。そして凍結胚移植。で、陽性。こんなトントン拍子なのはどうして?
当院の治療も進化していて、今月だけでAMHが0.1未満と0.2の方がご懐妊となり、共に順調な経過となっている。お二人とも、鍼灸開始から3、4ヶ月で胚盤胞を得られた。
ところでこの二人目希望の方、婦人科でAMHを計測したら、4だったのが8に跳ね上がっていた。2回とも同一医療機関で計測しているので、医師が「あれ?こんなの、、、上がるはずがないのに、おかしいな?」と。
しかし、AMHが上昇しただけでなく、採卵結果も以前とはがらりと変わり、いきなり胚盤胞で陽性ですから、何が作用したのかわかりませんが、そういう事もあるのですね。
「いや、無い無い。」
はい、無いはずです、常識的にはそんな事。
でもこれはまぎれも無い事実なんです。
ということで、当院で過去2回以上AMHの計測をされた方の鍼灸来院前とそれから数ヶ月以上経過して再計測された方のAMHを比較したら、6人中5人で上昇が見られたのです。
そんなこと、、、あるはず無い。
本当にそういう傾向が見られたら、それはそれでスゴいのですが、
疑心暗鬼になりながらも、現在検証中です。
当院に来院されている方々で、着床前診断を受けておられたかたが3人あった。現時点で39才、40才、42才。胚盤胞をいくつか貯めて診断に出されていた。
胚盤胞にまで育っても、染色体異常があれば着床しないか、着床してもほぼ流産、という結果になる。例外は21トリソミーと性染色体異常であるが、それ以外に挙児の希望をかなえることはほぼ不可能である。
39才の方が調べられたところによると、20個の胚盤胞のうち染色体正常胚は3個、40才の方は6個のうち1個、42才の方は9個のうち3個。人によって極めて個人差が大きいが、正常胚の割合は、私たちが想像している以上に低い場合が多々ある事を示唆している。
そしてこれらの胚を移植した場合、妊娠率は50〜70%と言われているので、着床が今もってブラックボックスである所以である。
当院では鍼灸治療を行った場合、鍼灸来院前の採卵成績が向上することはすでに実証済みである。それを私はここだけで大言豪語しているのではなく、研修会や講演会で、しっかりとそのデータと方法を開示している。待合室にもそのでデータを置いている。誰の目にも触れるように。
この公開が非常に大きな意味を持つ。人の目、特に同業の先生方に説明し、その方法が晒されて初めて、それが正しさを増す。それが無ければうさんくささが消えない。
さてそれを聞いて、当院の治療法を取り入れて下さった同業の先生方から、今月すごい話しが飛び込んできた。まだ月も半ばだった頃、今月の妊娠が10人を軽く越えた、、、とか、45才の方がお二人妊娠した、とか。以前は47才の方が妊娠したというご報告も頂いた。当院の治療の実効性が他院で証明される。これほど信頼できる事は無い。
これこそが私が目指す治療だ。きちんと伝えて、そして再現性を有すること、これでなくては医学は「学」足り得ない。それをしないのは医学ではなく医術である。
さて、上記の着床前診断の3人の方は、昨日の妊娠をもって3人全員の妊娠が成立した。50〜70%ではなく100%となった。当院の鍼灸治療では、着床率も向上する事が証明されているが、たった3人とは言え、ここでもしっかり証明する事が出来た。
来年は1月に仙台で講演。3月は京都で不妊鍼灸ネットワークの公開講座がある。全国から集まる不妊に真剣な先生方に確実な方法をお届けしたい。
当院はたった2床の鍼灸院であるが、その設備はどこにもひけを取らない。この2床から得られる綿密なデータが効果を実証し、それを日本中にあまねく伝えて行く事が、不妊鍼灸ネットワーク会長としてのパブリックな責務であると信じている。
ところで鍼灸を受けると胚盤胞到達率が上昇するが、それが真に意味する事は何か、ただ単に卵子の栄養状態がよくなっている、、、なんて単純な事ではなさそうな予感がしている。それを検証する事が現時点での課題である。
年末年始、また治療室にこもってカルテと資料の分析を頑張りたい。
世の中、ラーメン好きは意外と多いものだ。
治療の帰りに、当院の近辺でラーメン屋さん巡りする人がいたりする。
ラーメンのスープは、私たちの目に見えないところで店主が手間ひまと長い時間をかけて趣向を凝らして仕上げる。細麺、太麺、ちぢれ麺などの麺との相性、具材との相性、その店の立地にあった(客層)味の濃さ、コクなど。日本全国に無数にあるラーメン屋さんそれぞれで必ず微妙に異なっている。
私たちは自分の舌に合ったラーメンに出会うと、まるで何もかも忘れたようにその一杯を堪能する事ができる。
あるラーメン屋さんでの話し。
いかにも、、、いかにもといった風貌の男性客が入って来た。今にも暴れ出しそうなほど粗暴な素振りを見せている。飲んだ帰りだろうか酒臭い。その客は席に着くと、タバコに火を点けおもむろに、
「この店のお勧めをくれ」
と無造作に言ってのけた。
店主は少し怖じ気づきながら
「では少しお待ち下さい」
と言いながら、ラーメンを作り始めた。
他の客もそれなりにいて、出来上がるのが遅い。
いやそれにしても遅すぎる。
その客はじれったくなり、いかにもいらついている様子。
じわりじわりと怒り出している。
「まだか?」
「お待たせしました」
と店主は、その客の前にラーメンを出した。
「おっせ〜な〜」
と半ば怒鳴り口調で言い放った後、ラーメンを食べ始めた。
すると先ほどまでの粗暴な素振りは徐々になりをひそめ、
一心不乱に食べ終わった後、
「む。うまい。このラーメンは俺にぴったりだ。
特にこのスープは絶妙だった。」
と言うや、カウンターにお金を置いて帰って行った。
それから間もなく再びその店を訪れた客は、粗暴な素振りなど無く、
「店長、またあのラーメンを下さい。」
言葉遣いまで丁寧になっていた。
「少々お待ち下さい。」
この日は他の客も少なく、しかもこの客の好みを知っている店長は、速やかにラーメン出した。
この客は、前回にも増して一気に平らげ、おとなしく食べて帰った。
これがラーメンスープ(麺液/免疫)の力だ。