日々の診療の様子をお伝えします
世の中、ラーメン好きは意外と多いものだ。
治療の帰りに、当院の近辺でラーメン屋さん巡りする人がいたりする。
ラーメンのスープは、私たちの目に見えないところで店主が手間ひまと長い時間をかけて趣向を凝らして仕上げる。細麺、太麺、ちぢれ麺などの麺との相性、具材との相性、その店の立地にあった(客層)味の濃さ、コクなど。日本全国に無数にあるラーメン屋さんそれぞれで必ず微妙に異なっている。
私たちは自分の舌に合ったラーメンに出会うと、まるで何もかも忘れたようにその一杯を堪能する事ができる。
あるラーメン屋さんでの話し。
いかにも、、、いかにもといった風貌の男性客が入って来た。今にも暴れ出しそうなほど粗暴な素振りを見せている。飲んだ帰りだろうか酒臭い。その客は席に着くと、タバコに火を点けおもむろに、
「この店のお勧めをくれ」
と無造作に言ってのけた。
店主は少し怖じ気づきながら
「では少しお待ち下さい」
と言いながら、ラーメンを作り始めた。
他の客もそれなりにいて、出来上がるのが遅い。
いやそれにしても遅すぎる。
その客はじれったくなり、いかにもいらついている様子。
じわりじわりと怒り出している。
「まだか?」
「お待たせしました」
と店主は、その客の前にラーメンを出した。
「おっせ〜な〜」
と半ば怒鳴り口調で言い放った後、ラーメンを食べ始めた。
すると先ほどまでの粗暴な素振りは徐々になりをひそめ、
一心不乱に食べ終わった後、
「む。うまい。このラーメンは俺にぴったりだ。
特にこのスープは絶妙だった。」
と言うや、カウンターにお金を置いて帰って行った。
それから間もなく再びその店を訪れた客は、粗暴な素振りなど無く、
「店長、またあのラーメンを下さい。」
言葉遣いまで丁寧になっていた。
「少々お待ち下さい。」
この日は他の客も少なく、しかもこの客の好みを知っている店長は、速やかにラーメン出した。
この客は、前回にも増して一気に平らげ、おとなしく食べて帰った。
これがラーメンスープ(麺液/免疫)の力だ。