2015年11月

臨床研究とブログ開始

妊活支援団体で「NPO法人Fine」というものがあります。

この団体国内最大の団体で、今妊活中の人を支援し、
また今後、妊娠に苦労する人が減るように、
更には妊活を終えた人がその後の人生が有意義になるように、
実に様々な取り組みを行っています。

学校教育に妊娠に関する教育を盛り込むように、
尻の重い文部科学省に強く働きかけて、
それを実現させる大きな原動力となった団体でもあります。

大体、少子化が叫ばれて久しいのに、
これほど民間から突き上げないと動かない政府って、
一体なんなんでしょうね?

さてそのFineが運営するサイト「nin」において、
私たち不妊鍼灸ネットワークがブログ執筆を依頼されました。
理事長の松本様は以前、本会研修でご講演頂き、
また他の研修も見聞頂き、本会の質を認めて下さいました。
そして今回の依頼を頂きました。

初回は、私が担当させて頂きました。

http://www.nin.club/plus/ninkatsu-to-hari-kyuu

コンセプトは、

1、鍼灸が不妊の原因によって、有効に作用する事の周知。

2、どうして効くのかを一般の方々に分かりやすく説明する事。
 またそれにはどんな手技が必要かを理解頂く事。

3、2の知識を備えて頂く事によって、ちまたにあふれる
 「不妊専門鍼灸院」や「不妊を得意と標榜する鍼灸院」の中から、
 優良な院を選ぶ基準として頂く事。
 また現在通院中の院があるなら、
 そこできちんとした治療を行っているか、
 その判断材料として頂く事。

4、そしてもちろんの事ですが、子供を欲しいと願う方々が、
 良い選択をされ、良い結果になる一助となること。

私たちの学習研究は大きく細やかに、長期間にわたって行われます。
いわゆる retrospective cohort study
と呼ばれるものです。

それを行うには、カルテを詳細に記録する事、
そして治療内容と結果に一定の傾向を感じたら、
他の治療法との比較、また鍼灸が介入していないデータとの比較、
それを何年分ものカルテを調べ上げてデータ抽出します。
そして今度は、その手法が真に有効であるか、
未来に向けて検証を開始します。
そうして着実に効果が出た場合、それを発表します。

卵巣動脈における血流増加、と一口に言っても、
膨大な資料が存在します。
子宮動脈への血流量増加にしても、大変な研究です。
着床率上昇について治療毎に傾向を把握するだけで、
気が遠くなるような分析を必要とします。
一つ一つ、それだけで何年間も必要とします。

それらの詳細を述べるには専門的すぎますが、
このサイトではまず鍼灸入門講座として頂ければと思います。

第2回は、当ネットワーク学術部長木津正義先生が担当予定です。

私たちは何年間、いや十数年かけて効果の検証を続けています。
そのたゆまぬ努力に誇りを持っています。

どうか、皆さんが良い鍼灸を受けられ、希望を叶えられますように。

そう願って止みません。

ところで昨年3月に本会(不妊鍼灸ネットワーク)が、
この京都の地で「第1回公開講座」を開催しました。
会員はもとより、会員外でも北海道から鹿児島まで、
全国から百人以上の不妊を学びたい鍼灸師が集いました。
朝10時から昼食時も休まず5時まで7時間ぶっ通し。
極めてレベルの高い講義と実技供覧が行われました。

来年3月には第2回が開催されます。
また日本中から真剣な先生方が集まられるでしょう。

今年は、醍醐渡辺クリニックの院長と培養室長が登壇予定です。

とんでもない話しを持ち込んで下さる予定で、
今からワクワクします。

こんな偶然、ありますか?

先日の事。
夜の8時にキャンセルが出たので、9時の患者さんにご連絡。
もし早く来られるならと思ったのだが、電話に出られなかった。

なのに、、、8時に、、、「こんばんは」という声。

そうなんです。

連絡がついてないのに、この方は間違えて8時に来られたんです。

「Uさん、今日のご予約が何時と思っておられましたか?」

手帳を開くと

「あ!1時間間違えてしまった!しまった!」

「いえ、ちょうどいいんです。
 この8時だけキャンセルが出たので、
 先ほど連絡させて頂いたんですが、
 電話出られなくて、、、。」

「え〜っ?そうなんですか?それはなんとラッキーな!」

と、うまく治療を受けて頂けました。

そうしたら今日、草津で11時のみ空き時間があったのですが、
来週日曜の11時にご予約の(またイニシャルが同じ)Uさんが、

「おはようございます」

と来院。私たちは目を丸めてびっくり。

「予約券お持ちですか?」

「はい、あれ? 来週だった、、、(笑)」

「いえ、ちょうどここだけ予約が空いているんです。」

「え?そうなんですか?てっきり今日だとばかり、、、」

ということで、これもうまく治療を受けてもらえたのでした。

ということで、こちらもめでたしめでたし。

イニシャルがお二人とも「U」というのが、これまたびっくりです。

免疫と着床

着床障害ってなんで起こるんだろう?

いろんな理由が推測されるけれど、原因の一つに免疫の過剰反応がある。そう、いわゆるアレルギーってやつ。授精卵は、母由来のnと父由来のnの染色体を合わせて2nとなっている。それはもはや母親の細胞とはまったくの別物。それが透明帯をでて内細胞が子宮内膜に接した時に、子宮が拒絶反応を起こしているかもしれないって事。

Rh+とRh−の両親の間に妊娠が成立すると、1人目は出産するが二人目は必ず流産(という言葉を使っておく)する。それは異なる因子に対する抗体が出来上がり、二人目の時は授精卵を攻撃排除するからと言われている。アカゲザルの英名の頭文字からとったこのRhという因子が、妊娠には免疫が働くという事を私たちに教えてくれた。

さて抗体は全部で数百億種類あるといわれている。その種類を網羅する観察は不可能だ。ならばいずれかの抗体が働けば、授精卵も排除されうる可能性を否定出来なくなる。たかだか23対の染色体がもつ2万ほどの遺伝子が、どうして数百億もの種類の抗体を作り出せるのか、それは非常に複雑なプロセスによる。そのプロセスとは遺伝子の組み換えである。それを発見したマサチューセッツ工科大学の利根川進教授は、その功績でノーベル賞を授与された。私たちの生物の基本概念を覆す大発見であった。

さて、アレルギーには実は自律神経が影響を及ぼす事が知られている。例えばリラックスするとぜんそく発作が起きにくいとか、親に叱られると子供のアトピーが悪化するとか、落語を聞くと関節リウマチに良いとか、そういう例はいくらでもある。そのメカニズムを、大阪大学科学技術振興機構が発表した。しかしこれを読み解くには、大変深い基礎学習が必要で、目下それに取り組んでいる。

さて当院では交感神経の抑制に星状神経節への低出力レーザーを利用している。体外授精での胚移植周期に入る少し前から、来院の度に必ずそれを行っている。今年のお盆に出したデータでは、その手法が着床率を上げる事が示唆されたが、次のお正月のデータ整理でそれを証明したい。

最近の例で言うなら、それを当て始めたら10年以上のアッルギー性鼻炎が収まった、とか、職場での化学薬品アレルギー(くしゃみの連発)が無くなったとか、実はそういう方は胚移植に成功する人が多いのです。まわりくどい言い方ですが、他のアレルギーが沈静化していると妊娠しやすいって事を最近よく感じます。

レーザーは非常に高価な機械です。一台250万円。それを当院では、毎回追加料金無しで受けて頂きます。当てたり当てなかったり、それは薬を飲んだり飲まなかったりするのと同じで、効果が持続しないからです。

一度当てただけでずっと何かの効果が続くなんてことはあり得ません。そんな魔法は存在しません。レーザーを使用し始めて20年。どこよりも豊富な検証から得られた結果です。

その理論と効果を年明けに仙台で発表します。今は免疫学の勉強に必死です。

AMH上昇?と2人目妊娠

本日通院中の方が、
「今診察終わって無事着床してました!
まだまだ安心はできないですがとりあえずほっとしています。」
というメールが。

この方は1人目を授かるのにすごくご苦労されていて、当院に長い間通院されていました。2年半もかかり、採卵数回、しかし未熟卵が多く胚盤胞に滅多に到達しない。が、最終的に得られた胚盤胞でご懐妊、ご出産となった。

ところがそれから時を経て、昨年の秋に「もう1人」と言ってお越しになった。
「え?またあの闘いに戻るのですか?」
と、その人の勇気と決断に驚きながら、とりあえず3ヶ月間通院して頂き、その後に採卵したら、、、なんと1回目で胚盤胞。そして凍結胚移植。で、陽性。こんなトントン拍子なのはどうして?

当院の治療も進化していて、今月だけでAMHが0.1未満と0.2の方がご懐妊となり、共に順調な経過となっている。お二人とも、鍼灸開始から3、4ヶ月で胚盤胞を得られた。

ところでこの二人目希望の方、婦人科でAMHを計測したら、4だったのが8に跳ね上がっていた。2回とも同一医療機関で計測しているので、医師が「あれ?こんなの、、、上がるはずがないのに、おかしいな?」と。

しかし、AMHが上昇しただけでなく、採卵結果も以前とはがらりと変わり、いきなり胚盤胞で陽性ですから、何が作用したのかわかりませんが、そういう事もあるのですね。

「いや、無い無い。」

はい、無いはずです、常識的にはそんな事。

でもこれはまぎれも無い事実なんです。

ということで、当院で過去2回以上AMHの計測をされた方の鍼灸来院前とそれから数ヶ月以上経過して再計測された方のAMHを比較したら、6人中5人で上昇が見られたのです。

そんなこと、、、あるはず無い。

本当にそういう傾向が見られたら、それはそれでスゴいのですが、
疑心暗鬼になりながらも、現在検証中です。

着床前診断と着床率と、、、。

当院に来院されている方々で、着床前診断を受けておられたかたが3人あった。現時点で39才、40才、42才。胚盤胞をいくつか貯めて診断に出されていた。

胚盤胞にまで育っても、染色体異常があれば着床しないか、着床してもほぼ流産、という結果になる。例外は21トリソミーと性染色体異常であるが、それ以外に挙児の希望をかなえることはほぼ不可能である。

39才の方が調べられたところによると、20個の胚盤胞のうち染色体正常胚は3個、40才の方は6個のうち1個、42才の方は9個のうち3個。人によって極めて個人差が大きいが、正常胚の割合は、私たちが想像している以上に低い場合が多々ある事を示唆している。

そしてこれらの胚を移植した場合、妊娠率は50〜70%と言われているので、着床が今もってブラックボックスである所以である。

当院では鍼灸治療を行った場合、鍼灸来院前の採卵成績が向上することはすでに実証済みである。それを私はここだけで大言豪語しているのではなく、研修会や講演会で、しっかりとそのデータと方法を開示している。待合室にもそのでデータを置いている。誰の目にも触れるように。
この公開が非常に大きな意味を持つ。人の目、特に同業の先生方に説明し、その方法が晒されて初めて、それが正しさを増す。それが無ければうさんくささが消えない。

さてそれを聞いて、当院の治療法を取り入れて下さった同業の先生方から、今月すごい話しが飛び込んできた。まだ月も半ばだった頃、今月の妊娠が10人を軽く越えた、、、とか、45才の方がお二人妊娠した、とか。以前は47才の方が妊娠したというご報告も頂いた。当院の治療の実効性が他院で証明される。これほど信頼できる事は無い。

これこそが私が目指す治療だ。きちんと伝えて、そして再現性を有すること、これでなくては医学は「学」足り得ない。それをしないのは医学ではなく医術である。

さて、上記の着床前診断の3人の方は、昨日の妊娠をもって3人全員の妊娠が成立した。50〜70%ではなく100%となった。当院の鍼灸治療では、着床率も向上する事が証明されているが、たった3人とは言え、ここでもしっかり証明する事が出来た。

来年は1月に仙台で講演。3月は京都で不妊鍼灸ネットワークの公開講座がある。全国から集まる不妊に真剣な先生方に確実な方法をお届けしたい。

当院はたった2床の鍼灸院であるが、その設備はどこにもひけを取らない。この2床から得られる綿密なデータが効果を実証し、それを日本中にあまねく伝えて行く事が、不妊鍼灸ネットワーク会長としてのパブリックな責務であると信じている。

ところで鍼灸を受けると胚盤胞到達率が上昇するが、それが真に意味する事は何か、ただ単に卵子の栄養状態がよくなっている、、、なんて単純な事ではなさそうな予感がしている。それを検証する事が現時点での課題である。

年末年始、また治療室にこもってカルテと資料の分析を頑張りたい。

ラーメンスープ

世の中、ラーメン好きは意外と多いものだ。
治療の帰りに、当院の近辺でラーメン屋さん巡りする人がいたりする。

ラーメンのスープは、私たちの目に見えないところで店主が手間ひまと長い時間をかけて趣向を凝らして仕上げる。細麺、太麺、ちぢれ麺などの麺との相性、具材との相性、その店の立地にあった(客層)味の濃さ、コクなど。日本全国に無数にあるラーメン屋さんそれぞれで必ず微妙に異なっている。

私たちは自分の舌に合ったラーメンに出会うと、まるで何もかも忘れたようにその一杯を堪能する事ができる。

あるラーメン屋さんでの話し。

いかにも、、、いかにもといった風貌の男性客が入って来た。今にも暴れ出しそうなほど粗暴な素振りを見せている。飲んだ帰りだろうか酒臭い。その客は席に着くと、タバコに火を点けおもむろに、

「この店のお勧めをくれ」

と無造作に言ってのけた。

店主は少し怖じ気づきながら

「では少しお待ち下さい」

と言いながら、ラーメンを作り始めた。

他の客もそれなりにいて、出来上がるのが遅い。

いやそれにしても遅すぎる。

その客はじれったくなり、いかにもいらついている様子。

じわりじわりと怒り出している。

「まだか?」

「お待たせしました」

と店主は、その客の前にラーメンを出した。

「おっせ〜な〜」

と半ば怒鳴り口調で言い放った後、ラーメンを食べ始めた。

すると先ほどまでの粗暴な素振りは徐々になりをひそめ、
一心不乱に食べ終わった後、

「む。うまい。このラーメンは俺にぴったりだ。
 特にこのスープは絶妙だった。」

と言うや、カウンターにお金を置いて帰って行った。

それから間もなく再びその店を訪れた客は、粗暴な素振りなど無く、

「店長、またあのラーメンを下さい。」

言葉遣いまで丁寧になっていた。

「少々お待ち下さい。」

この日は他の客も少なく、しかもこの客の好みを知っている店長は、速やかにラーメン出した。

この客は、前回にも増して一気に平らげ、おとなしく食べて帰った。

これがラーメンスープ(麺液/免疫)の力だ。

リウマチの講義

アップロードファイル 39KBアップロードファイル 36KBアップロードファイル 55KB

今日は、かねてより聴きたかった中島基嘉先生のリウマチの講義をようやく聴講出来た。12時前に滋賀の分院を飛び出して、高速をすっ飛ばして吹田まで。今まで、そして現在治療中のリウマチの患者さんの治療方針が正しいのかを確認したかったのと、新たな知見や現代医学的な情報を仕入れたかった。中島先生とは、今や飲み友達になっている。昔、勤務時代にリウマチ友の会に顔をだしたりして、患者さん方の生の声を聞いて、治療に励んだことを思い出す。その頃とは薬剤ががらっと変わっていて、現在の最新は抗体医薬(生物製剤)となっています。この薬剤の開発と製造の話しを読んでいますが、現代医科学のスゴさをまざまざと見せつけられます。しかし鍼灸は鍼灸で出来る事が沢山あり、その守備範囲をしっかりと認識して治療しなさいというお話でした。
続く講義は明治東洋医学院教員の梅本佳納榮先生。腎兪穴について。実は梅本先生とは5年前にライブハウスで一緒に踊った仲。あの時が懐かしいね、なんて少しばかりの昔話も。
校舎の4階から見た雲は、ちょっとへんてこりんでした。

むずかしいです!

アップロードファイル 135KB

モーツァルトバイオリンコンチェルト第5番
かれこれ2年半、苦しんでます。

為達会

「為達(なしたつ)会」発足のお知らせ

私たちの責務は、常に患者の利益を優先することですが、
それを真に追求する事は、たやすい事ではありません。
贅沢したい、見栄を張りたい、などという欲求が高じれば、
商業主義優先に走ってしまいます。

また患者さんの前だけ良い顔をするのではなく、
誰も見ていない所で、どれほどストイックに勉強、研究出来るか、
その姿勢をどこまで追求できているか、自問自答を繰り返します。
科学的な見方を持ち、本当に効果を出せているのか追求し、
水鳥の足のように、見えない所で水を掻き続ける。
それがもっとも困難ないばらの道であり、
しかしそれが自らの生活で習慣化した時に、
もっとも強固な礎となる事を、私は身を以て証明して来ました。

鍼灸院のような小規模の事業では、お金がかかる経営戦略やマーケティング論はなじみません。
サブビジネスなどやる暇があれば、目の前の患者さんを研究すべき。
それがお金を払って頂く患者さんへの誠実というものです。

人のライフサイクルに直接大きく関わる不妊という問題では、
常に効果を検証し臨床の質を上げる事、その為に努力を惜しまない事が、最大の責務です。

当院において極めて厳しい修行をくぐり抜け、そういった意識を強く持った3人と共に、

「為達会(なしたつかい)」を発足させます。

「為事達無心(事を為して無心に達する)」

事(厳しい修行)を為し遂げて、私利私欲を捨て、患者さんを思う心の他は無心に達する

患者さんのためには清貧に甘んじる事をいとわない、その境地を体得した3人です。
逆に、そういう清らかな心の臨床家には、自然と患者さんが集まります。
それが真の発展と言えるでしょう。
私も含めて、人格の陶冶はまだまだ必要ですが、医療を生業とする者の心構えはピカイチの3人です。

私はこの3人と巡り会えて良かった。
そしてこの3人を育てられた事に喜びを感じ、
良い鍼灸師に育った彼女達を誇りに思います。
今後は4人目、5人目の出現を期待します。

広告宣伝で美辞麗句を並べ立てたり、
虚飾なホームページでうさんくさい事やウソの数字を書いたり、
私たちはそういうものとは一線を画し、
「為達」の名に恥じない姿勢を貫く事を、3名の仲間と共に、ここに誓います。

純はりきゅう院 篠田純子
http://w01.tp1.jp/~a199398623/

はる鍼灸治療院 田邊美晴
http://haruharikyu.com/

草津栗東鍼灸院 露木藍
http://hari-9.com/shiga/index.html