2013年10月

パンダの親指

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スティーブンジェイグールド著「パンダの親指 進化論再考」について。

鍼灸に不妊治療を求めて来院される方が大勢おられる。

鍼灸は東洋医学であるが、不妊の原因がある程度推測される場合には、私は出来るだけ合目的的な治療を心がける。

例えば卵子の質。

高度生殖医療において顕微鏡で判別できる卵子の質は、多くの場合染色体の状況(極体の有無)から判断された成熟未成熟の区別であろう。しかしながら卵子の質を論じるなら、もうひとつ細胞質の質を避けて通る事は出来ない。

排卵される4ヶ月前から変化し始める卵子(正確には卵子の付随物としての卵胞ー更に言うなら卵子を取り囲む細胞群の増加と発達)が、初期胞状卵胞に至る前の体積の増加率、そこから排卵に至るまでの増加率を視野に入れないわけにはいかない。

初期胞状卵胞の以前と以後で分けたのは、顆粒膜細胞の増加と卵胞形成の過程による。それに関する議論は日を改めるとして、卵子表面は特殊な細胞接合により栄養供給を受ける。分子量千以下が基準と言われている。ならば卵子への栄養供給がもっとも効率的に行われる時期はいつか。

例えば体外授精における採卵で、その直前に集中して治療することは、前段のしくみから考えると左程卵子の質の向上に効果的ではないと言える。

卵子の質の向上にもっとも効果的な時期と方法は何か、それが頭から離れない。

そんな時、冒頭の書物にであった。

私たちは臨床を行いながら、しかしその結果を常に精査し続けなければ、新たな答えを導きだす事は出来ないし、その思考と方法が進歩する事も無い。

生殖と言う生物の生き残りをかけた最も大きなプロジェクトが、どんなコンセプトで種によって異なるやりかたで完成されているのかは、実はかなり俯瞰的なものの見方を必要とする。

産婦人科の専門書でも、細胞生物学の専門書でもなく、
「生き物はどうあるべきか、なぜそのような仕組みを持つに至ったか」
を考える時、始めて
「そうなっている」
のではなく
「そうなるべくしてなった」
ことが理解できるのであり、
それが未知の領域において、
「こうあるべきであろう」
という推察を生む。

そういう意味でこの書物は、生き物の仕組みの根幹を教えてくれるまるで指南書のような役割を果たしている。

中には私たちの臨床の心構えを示唆するような金言名句で溢れている。

ごめんね、納豆

納豆は、日本の伝統的な食べ物として、
その見栄えと臭いの悪さをものともせず、
私たちの食卓ではトップランクに君臨する。

ところが納豆に申し訳なく、
私は生卵を混ぜないと納豆を食せないでいた、
なんとこの40数年間も!

ある日家族で旅行に行き、
ホテルに泊まった時、
ー昨今のホテルはあのサルモネラ菌騒動から生卵を出さないー
仕方なく卵無しで、朝食で納豆を食べる事になった。

するとどうだ。
思っていたほど臭くなく、まずくなく、
どころか、日本人に生まれて良かったとさえ思える美味。

臭いと見栄えで食わず嫌いだった自分が情けない。
いや、40年余もなんともったいない事をしたんだろう。

誤解していました。

ごめんね、納豆さん。

5年間お疲れさま!

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バイオリンを始めて1年ほどで着用し始めた肩当て。
オーケストラを休んでいるこの間に、様々なフォーム改良を。

ということで、肩当てをせずに弾くことにしました。

楽器の角度が微妙に変わり、弓が定まりません。

ですが、運弓を改良している最中なので、
肩当てをはずすなら「今しかないでしょ!」
と、決断しました。

楽器が肩に直接乗ると、響きが体に伝わって、心地よい。

セロ弾きのゴーシュに出てくる動物達の気分ってこんなのかな、
な〜んて、考えてみたり。

来年のブラームス出たいなぁ。

日本人の知らない武士道

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新渡戸稲造の武士道はまぎれも無く私の座右の書のひとつであるが、武士道をもっと分かりやすく説いた本に出会う事が出来た。

「日本人の知らない武士道」アレキサンダーベネット著

日本の武士道に心酔し、その研究をライフワークにした著者が、武士道をいろいろな視点から、しかも現代社会の例を挙げて説いている。

新渡戸の武士道は、もともと外国向けに書かれた英文を、和訳したいわゆる逆輸入版であるが、上記の著書は外国の人が書いた日本語の武士道の本である。

武士道は、日本人に大きな影響を与え、日本のモラルの根幹ともいえる精神文化を形成して来たが、しかし日本人だからこそ当たり前のように考えもしなかった問題に、外国人の視点から光を当て、そしてその本質に迫ろうとする良著である。

私は剣道を20年以上やってきて、自分の成長に剣道の存在は欠かす事が出来ないものであった。その生い立ち無くして、今の自分はあり得ないし、私の自我が剣道からいかに大きな影響を受けたか、この書物を読むと本当によく理解できる。

今、私たちが取り組んでいる東洋医学は、東洋で二千年以上の歴史を持ち、東アジア固有の医学から世界の医学への道を辿り始めたばかりであるが、日本人であるからこそ当たり前のように考えてきた事は、外から見ると実は当たり前でもなんでもない。そして日本人固有の、というより日本人共有の思考や常識が崩れかけている今、同じ日本人に対してもまるで外国人に接するような詳細な分析と説明を必要としているだろう。

しかし、それがきちんとなされる事は、私たちの足元を見つめ直し、当然と考えて来た事の真偽を問い直す事につながるだろう。

東洋医学も、武士道よろしく、そういう篩(ふるい)にかけられなければならないと思う。

年齢の壁と超音波治療

本日、46才の方のご懐妊がありました。
前の婦人科の診察では、β-hCGがあまり高くなかったのですが、
次の診察で見事に胎嚢を確認されました。

今までの妊娠の最高齢は45才でしたから、
最高齢を更新した事になります。

45才からの妊娠は本当に難しいと日々実感。
8月から使用開始した超音波治療の効果があったのか、
今の所分かりませんが、不妊治療は何と言っても妊娠が第一目標。
心よりお慶び申し上げます。

ですがこれから安定まで、まだ予断を許さない状況です。
染色体異常による流産は不可避としても、
それ以外の流産は、あらゆる手を尽くしても、
なんとか阻止したいと考えています。

超音波治療も、今の所良い結果も出始めました。
授精7個すべて胚盤胞、、、など。

1人でも多くの方のご懐妊を実現したいと思います。