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子宮内膜改善で胚移植準備

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4ヶ月前に、胚移植をしたいが子宮内膜が厚くならないという方が来院された。聞くと他の鍼灸院に100回行かれたが、変化が無いと。

多額の治療費を支払われて、効果もなく、
時間ばかりが経過して、凍結胚も保存のまま、
意気消沈しておられた。

子宮内膜が厚くならないのは、主に3つの理由がある。

エストロゲンの分泌不足。
エストロゲンレセプターの不足。
子宮血流の不足。

年齢(48才7ヶ月)からすると、もっとも可能性が高いのはエストロゲン不足だろう。
エストラーナを張っても厚くならないとしても、それがすなわち血流不足だけとは限らない。さらにレセプター不足は殆ど無いと言われているし、ましてこの方、以前は9ミリ位だったから。

それは例えば血管自体が分泌するエンドセリンは、外部から投与しても、所期の血圧変動効果が得られない事からも類推できると思う。足りないからと足しただけで元来の効果がでるとは限らない。ホルモンと言うのはそんな簡単な作用機序ではない。

されば、この方、どうして厚くならないか、それは外部から入れたエストラーナによるエストロゲン類似作用では、エンドセリンと同様の問題が起こるのでは無いかと考えた。エストラーナ貼付無しでまずは内膜の改善を試みた。

が、やはり血流も上げておくに越した事は無い。

100回も鍼灸を受けられていたのだが、よくもまた鍼灸に来ようと思われたと感心しながら、当院の技術力を示さねばならないと上記の理論でもって臨んだ。

当院にはエコーがある。2ヶ月経過してそれを見たところ、おそらく7ミリ台にまで回復していたので、急遽婦人科へ行って頂いた。(医師の経膣エコーと、私たちが使う経腹エコーでは、見え方がまったく異なるので、その計測には諸種条件を考慮した換算が必要である)

医師は当分休むように言っておられたが、内診すると8ミリ近くまで厚くなっていたので、翌月から移植準備に入ろうということになった。

鍼灸は東洋医学と言われるが、東洋医学理論だけを振り回しても、こういった状況を速やかに改善する事はできない。脈などの主観に頼る治療法には当たり外れが大きすぎる。やはり婦人科をしっかり学び、その人に足りないものを、科学的に補足する技術を備えなければならない。私たち不妊鍼灸ネットワークでは、それを真剣に追求し、答えをだしている。

よくあちこちに、鍼灸はホルモンバランスを整えるとか書いているが、では実際にどのようにバランスが整っているのか、データを取っているのだろうか。
内膜が厚くなるというのなら、きちんとエコーを備えて観察しているのだろうか。
良い卵が育ちますというなら、どの程度の改善があるのか、大きな分母で検証しているのだろうか。

なにかしら良い言葉だけをならべ、自分では検証もせず、まるで言葉だけをパクる。またそういうところに患者さんが引き寄せられ、そうして効果がないままお金と時間を無駄にしている人が極めて多い。過去、100人に近いほどの人が、他の鍼灸院から転院して来られているが、その人達の言葉からそれが伺い知れる。

この方は、鍼灸による卵巣動脈拡張法(注1)と(内臓体壁反射利用による)卵巣消炎法(卵巣術後疼痛に使う)(注2)、交感神経抑制法(注3)、またレーザーによる星状神経節及び子宮動脈照射を毎回継続し、今月も続けて8ミリの内膜を得て、いよいよ胚移植へと向かわれる。

当院では、他にも様々な手技手法があるが、その人の状況に応じて最適な組み合わせを選び適用する。その組み合わせがぴったりはまると予定通りの効果が、予定通りの時期に発現する。それを見た瞬間は、いつも身震いするほどの興奮を覚える。なぜならその方法は、私たちがネットワークの仲間達と議論を通して開発してるからだ。その患者に対しているのは私1人でも、私の後ろには全国津々浦々の心を通わせた仲間達がいて、彼らと、そして当院のスタッフと闘っているのだ。

移植直前、移植後はまた治療が微妙に変化する。
最善を尽くし、あとは祈るばかりだ。

注1 文部科学省助成研究で、ラットの卵巣動脈拡張25%を証明した手法。
注2 卵巣嚢腫、卵巣摘出等術後疼痛における治癒促進手技
注3 東北大学医学部(だったかな?)におけるラットの睡眠時間延長による交感神経抑制を証明した経穴付近の神経支配を利用。

当院では、他にもさまざまな手技を、一人一人に合わせて綿密に組み立てて応用し、出来るだけ確かな効果を期待する。

H27、12、20追記
「技術は嘘をつかない!!」(「下町ロケット」最終回より)
明日とうとう、この方は遠いところで移植を受けられる。
この祈りよ、頼むから届け!