診療日記

10年ぶりの方

昨日、10年ぶりに初老の男性がお見えになった。

「10年前に、肩が痛くて上がらなかったのを治してもらった、
 今回も、整形外科でなおらないので、お願いしたい」

とお越しになった。

その方、私の顔を見るなり、

「先生、10年前と全然変わってませんな〜!」

と、陽気に言ってくださり、少しうれしい。

ところがその方、確か以前はなかったあごひげをたくわえておられる。

そこで、

「あれ?Fさん、前はひげなんてありませんでしたよね?」

と言うと、Fさんは頭をかきながら、

「上がなくなったから、下に増やしましてん!」

と言われ、二人で大笑い。

今回も早く治ってくださいね〜。

着床前診断と着床率と、、、。

当院に来院されている方々で、着床前診断を受けておられたかたが3人あった。現時点で39才、40才、42才。胚盤胞をいくつか貯めて診断に出されていた。

胚盤胞にまで育っても、染色体異常があれば着床しないか、着床してもほぼ流産、という結果になる。例外は21トリソミーと性染色体異常であるが、それ以外に挙児の希望をかなえることはほぼ不可能である。

39才の方が調べられたところによると、20個の胚盤胞のうち染色体正常胚は3個、40才の方は6個のうち1個、42才の方は9個のうち3個。人によって極めて個人差が大きいが、正常胚の割合は、私たちが想像している以上に低い場合が多々ある事を示唆している。

そしてこれらの胚を移植した場合、妊娠率は50〜70%と言われているので、着床が今もってブラックボックスである所以である。

当院では鍼灸治療を行った場合、鍼灸来院前の採卵成績が向上することはすでに実証済みである。それを私はここだけで大言豪語しているのではなく、研修会や講演会で、しっかりとそのデータと方法を開示している。待合室にもそのでデータを置いている。誰の目にも触れるように。
この公開が非常に大きな意味を持つ。人の目、特に同業の先生方に説明し、その方法が晒されて初めて、それが正しさを増す。それが無ければうさんくささが消えない。

さてそれを聞いて、当院の治療法を取り入れて下さった同業の先生方から、今月すごい話しが飛び込んできた。まだ月も半ばだった頃、今月の妊娠が10人を軽く越えた、、、とか、45才の方がお二人妊娠した、とか。以前は47才の方が妊娠したというご報告も頂いた。当院の治療の実効性が他院で証明される。これほど信頼できる事は無い。

これこそが私が目指す治療だ。きちんと伝えて、そして再現性を有すること、これでなくては医学は「学」足り得ない。それをしないのは医学ではなく医術である。

さて、上記の着床前診断の3人の方は、昨日の妊娠をもって3人全員の妊娠が成立した。50〜70%ではなく100%となった。当院の鍼灸治療では、着床率も向上する事が証明されているが、たった3人とは言え、ここでもしっかり証明する事が出来た。

来年は1月に仙台で講演。3月は京都で不妊鍼灸ネットワークの公開講座がある。全国から集まる不妊に真剣な先生方に確実な方法をお届けしたい。

当院はたった2床の鍼灸院であるが、その設備はどこにもひけを取らない。この2床から得られる綿密なデータが効果を実証し、それを日本中にあまねく伝えて行く事が、不妊鍼灸ネットワーク会長としてのパブリックな責務であると信じている。

ところで鍼灸を受けると胚盤胞到達率が上昇するが、それが真に意味する事は何か、ただ単に卵子の栄養状態がよくなっている、、、なんて単純な事ではなさそうな予感がしている。それを検証する事が現時点での課題である。

年末年始、また治療室にこもってカルテと資料の分析を頑張りたい。

臨床研究の学習

次の学会で、

5月24日(日)9:00〜12:00(小会議室2・3)
臨床研究ステップアップワークショップセミナー
第4回 臨床研究の道標(みちしるべ)‐研究デザイン7つのステップ-
演者:
福原 俊一
(京都大学大学院 医学研究科 社会医学系専攻 医療疫学分野 教授)
福間 信吾
(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター 技術補佐員)

を受講します。
「臨床研究に道標」という福原先生の著書を読んでいるのだが、より深く理解するため。
ところがこれを受講するにあたり、インターネットで4時間の事前講義を受ける必要がある。いや、なんと素晴らしい。
これだけで福島までの旅費と学会の参加費と、ぜ〜んぶチャラになった気分。

ありがたやありがたや〜。