Disease
各疾患の説明
運動器疾患の鍼灸治療
来院された方々は、ねん挫、肩関節痛、腕のしびれ、腰痛、むちうちなどですが、 公益社団法人日本鍼灸師会の臨床研修会講師であった私(中村)は、 的確な病態把握と、 それに基づいた治療法を第一義に治療にあたっています。この領域では、 当院や京都の本院でも何人もの医師の方もお見えになっています。
膝が痛いご高齢の女性、捻挫をしてなかなか治らなかった方、腰痛や神経痛がひどくて仕事に行けない方、 肩こり眼精疲労ふらつきまでおこしている方、など様々です。
どうぞお気軽にご相談下さい。
運動器疾患の症例
男性 50代前半
部のコリが手の震えや顔の痙攣を引き起こした例
来院3週間前に、右腕で重いものを持つと手が震えた。それはすぐに消失したが、 その後に右の肩甲骨の辺りに痛みが起こった。頚部を動かすたびに誘発され、上部頚椎の 椎間狭小が疑われたが、2、3カ月前から顔面が痙攣するということで、後~側頚部の筋群の過緊張が疑われた。 その痙攣は毎日夕方から起こった。肩こりが極めて強く、右肩は左より盛り上がっていた。まず頚部から肩の強いこりを取り除き、顔面神経に対しては、よく締め付け(entrapment)が 起こりやすい部位の緩解を目標とした。結果、3回で痙攣及び背部痛は半分になり、6回で背部痛は初期の10分の1以下に。 痙攣は週に1度の短時間で収束するようになった。日常生活に支障がなくなったので、ここ で終了とした。
頸腕症候群の速やかな改善
来院3週間前に洗髪中に左の肩甲骨辺りに「バチッ」とした痛みを感じた。 翌朝、起床が辛いほどの痛みを首に感じた。接骨院へ行き、電気治療や肩の運動療法を行うも、 痛む範囲が徐々に広がり、次第に中指から小指にかけてしびれ始めた。この状態で来院。
頚部の諸種の徒手検査では異常が見られなかったが、頚腕症候群の範囲に入る 徒手検査で複数の陽性所見を得た。おそらく2カ所で神経が圧迫を受けていると考えて治療。
1回の治療で痛みは半減し、3回の治療で苦痛は5分の1に。その後に重いものを運び、 多少の再燃を見たが、それも速やかに収束し、9回の治療で完治を見た。 なお、この治療と並行して行った不妊治療でも良い結果となった。(婦人科症例を参照*印)
女性 30代後半
男性 40代後半
ストレートネックによる頸肩こり
来院される15年前から、頸肩こりが常にあった。疲れると頭痛も出現する。仕事が事務職で、1日中パソコンを見ていると更に凝るとの事だった。運動不足を改善する為、週に2~3回水泳をしている。水泳後はこりが少し改善する様に感じるが、仕事をするとこりが酷くなる。手のシビレや夜中に痛む事も無く、今回の症状での病院受診はしていない。
この状態で来院され、治療2回目で、一番こりを感じていた時の半分以下まで改善した。鍼治療した後は体が軽く感じるが、仕事をすると戻ってしまう。しかし治療4回目で殆んどこりを感じる事無く、快適に過ごせているとの事だった。その後は、辛いと感じた時に任意で来院。
ヘルニアもある神経根性神経痛の緩和
来院二週間前に寝違いで頚部痛と左上肢への痛みと痺れが起こった。以前頚椎椎間板ヘルニアの診断を受けており、いつもの薬(ロキソニン、リリカ)を相次いで服用するも、今回は症状が消えず来院。初回時は頚後屈がわずか10度で左上肢に痺れが起こるなど、首をわずかに動かすのもつらそうであった。
以前、極めて重度の頚椎症性神経根症の改善例があったので、それに倣い鍼灸とレーザーで治療。2回で安静時痛も動作時痛も半減し、3回でかなり良好となり日常生活で支障がなくなる。結果、治療4回で終了とした。ヘルニアがこんなに少数回で根治するわけではないが、椎間板の後方にかかる圧を増す頚部の筋の緊張をとる事を主眼とした結果、症状の寛解を見た。
<コメント>今回の症状がヘルニア由来なのか、頚部筋群の過緊張によるものなのか定かではないが、鎮痛薬さえ効かない症状に鍼灸が著効を示した一例である。
男性 30代後半
男性 50代
治療3回目に効果が出た急性腰痛
来院3週間前、休暇でスキーに行き上級者コースを1日滑っていた。帰宅後数日して腰がズキズキ痛み始めた為、湿布とサポータで対処していた。
来院8日前の朝、痛みで起き上がれず近医整形受診。レントゲンにて腰椎4~5番の間が減っていると指摘されたが、手術の適応ではないと言われ、安静指示とロキソニンで経過観察。しかし、症状改善せず1週間寝たきりになり来院された。シビレ無し。起き上がり時痛有り。最悪時に比して7/10程度のつらさで来院。初回治療を経て、2回目の来院時には痛みは半分ぐらいになっていた。聞くと治療翌日には痛みが低下し動きもスムースになったとの事であった。しかし、10分ほど立位が続くと左腰のダルさがきつくなる。3回目の来院では、痛みは少しあるが寝返りが打てるようになり、日常生活も普通に送れるとの事。その後仕事にも復帰出来た。
下肢のスポーツ障害
来院4か月前の中学入学後、部活で長距離走の練習を繰り返した。それまでスポーツ歴なし。来院1か月前のランニング時、下腿内側が痛み始めたが放置。来院1週間前よりランニング時に同部位の痛みが強くなり、近医整形受診。「シンスプリント」と診断されるも特に処置なく、練習も普段通り続けてよいと言われたが、痛みでランニングが困難であった為来院。
初診時、徒手検査等により原因となる箇所を特定し、炎症の早期鎮静と筋疲労回復を目的に治療。計2回でシンスプリントに起因すると思われる痛みは治まったが、3診目でオスグッドシュラッター氏病と思われる症状を訴えられた為、加療。いずれの場合も治療や安静直後の練習では問題は無いが、練習量が増えると痛みが起こった。その為、練習量の調節や前後のストレッチ・マッサージをしてもらって痛みはほぼ消失したので、終了とした。
女性 10代中学生
男性 30代後半
腱鞘炎
来院3か月前の起床時より右の薬指の付け根付近に痺れが出現し、更にばねの様にスムーズに伸びなくなった。来院までに、近医整形を2度受診し、いずれも「腱鞘炎」と診断された。湿布を処方され、ストレッチも指導されていたが行わず、症状は変わらないままだった。来院前日の起床時、痺れが知覚麻痺へと悪化、さらに指を後ろにそらすと痛みが発現。発症直前の仕事中、やり慣れていないネジをしめる作業を繰り返していた。消炎鎮痛を目的にスーパーライザーを患部に照射すると、直後に手掌のこわばり感がとれ、後ろにそらしても痛みの発現は無かった。
原因と思われる作業を暫く続けなければならない状況であった為、作業前後のマッサージやストレッチをご自身でしてもらった上で、様子をみる為に1週間後に来院して頂いた。2診目、同じ動作での痛みは半減。起床時の痺れなどは無かった。3診目、痛みはピークより7~8割程度軽減し、日常生活に支障がなくなった為、以降はセルフケアのみで終了とした。
治療1回で右肘痛が改善した例
来院2~3カ月前に、自宅でうつ伏せから起き上がろうとして転倒。その時右肘を打撲した。病院には行かず経過観察していたが上着を着る動作やリュックを背負う動作で右肘に痛みが走るという事で来院。シビレはなし。初診から1週間後に来院され、1診目の治療で肘の痛みが取れたという事だった。現在、他疾患で継続通院されている。
男性 30代後半
女性 43歳
頸肩痛が改善した例
来院1カ月前、趣味でバイオリンを3時間ほど弾いていた。その時は、特に何も症状は出なかったが、3週間後に頸、肩、頸を前に倒すと痛みが出現するようになった。近医整形外科受診し、レントゲンは撮影していないが、肩こりと診断されビタミン剤を処方された。痛みが改善されないため当院を受診。シビレはなし、ペインスケールは8/10。モーリーテスト陽性、ジャクソン・スパーリングテスト陰性。
1週間に1回のペースで治療開始。1診目でペインスケールは半減していた。しかし、前傾姿勢の動作(パソコン作業やお皿洗いなど)で頸椎の痛みはアップする。3診目、肩は重だるい感覚だったが、頸椎の痛みもなく調子は良かった。翌週5診目も調子は良く、前屈痛や頸肩の痛みも感じなくなったとの事で終了とした。
筋トレで起こった前腕の痛みと手掌の痺れ
来院2ヶ月前から手掌の痺れが起こる。毎朝1時間、ベンチプレス、腹筋などの筋トレを行っており、筋トレで右手を痛めてから左手の使用が増えると、左手掌の痺れと握力の低下が起こった。整形外科を受診、レントゲン異常なし。ビタミンB12を服用するも効果なし。その後、整骨院にて脊柱の矯正を受けるも変化なし。来院前には左右前腕の痛み、右手掌の痺れも感じるようになった。
頸部神経根症か過外転症候群の可能性も考えられたが、肘部管叩打で痺れの増悪があること、左手の薬指、中指の痺れが強いことから肘部管症候群による尺骨神経の圧迫もしくは回内筋症候群による正中神経の圧迫との判断で治療。
1回で、腕の痛みが激減。治療翌日も痛みが無かったが、その後ベンチプレスを行い再度左前腕の痛みが戻る。
2回で、痺れが軽減。痛みの出る範囲も狭くなった。しかし筋トレで左手掌の痺れ再発。
3回で、手掌の痺れがなくなる。握力も回復し、4回目の来院で治療終了。(治療期間19日間)
(コメント・・・神経症状の治療は原因となる部位の特定が肝心であることを示す一例である。)
男性 60代後半