耳鼻科疾患の鍼灸治療


 当院などには、耳疾患で来院される方が沢山おられます。今まで私たちが治療を行った耳疾患の方は 300人以上になります。来院の多い順にあげますと、突発性難聴、メニエル症候群、頭位変換性めまい、 ラムゼイハント症候群、騒音性難聴です。病院で改善されなくても鍼灸で効果が発揮できる場合があります。 お気軽にご相談下さい。しかしながら、ムンプス難聴については、残念ながら今までに改善例を見る事ができませんでした。 罹患ウイルスの種類によって(既知、未知も含めて)改善に大きな差が見られるようです。
 他に、めまい(ふらつき)に関しては必ずしも耳に由来しているとは言えず、自律神経性、頚性、過労からくるものなど様々な状態があります。耳鼻科で耳に異常が無いと言われた場合は、是非とも一度ご相談下さい。

耳鼻科疾患の症例

1、低音障害型感音性難聴 27才 女性

 来院1カ月前に左耳の違和感(こもり~閉塞)を感じた。よくある事と放置していたら聴力が低下し耳鼻科を受診。 低音障害性感音性難聴と診断を受ける。入院加療し、聴力はある程度回復したが、こもり、閉塞感が一向に消えず、 退院後に速やかに来院された。治療8回で症状は半減し、聴力はさらに良好となった。 計18回の治療をもって、こもり感は良好となり終了とした。

2、めまいと聴力低下が深刻な突発性難聴 37才 女性
表1 表2 表3 表4
表1 表2 表3 表4

 来院3週間前に左耳がもやっとして、耳鼻科を受診すると聴力低下を認め(表1参照)、 回転性のめまいも発症。9日間入院加療し、めまいは消失したが聴力は回復せず(表2)退院時は、 聴力低下だけでなく、動揺性のめまいが強く、耳鳴り、こもり(閉塞感)なども残存していた。
 初診時は待合から治療室の数歩を壁伝いに歩かれたほど。毎回ご家族が付き添って来られた。 初診からの1カ月間(休職中)は週に2回の治療を、復職してからは週に1回の治療を行い改善が続いている(H26,3現在表3)。 また動揺性のめまいはかなり改善され、予約に遅れそうになると、草津駅から小走りで来院できるまでになった。 H26年5月現在、加療改善中(表4)。

3、耳鼻科で原因不明と言われためまい 29才

 来院3週間前に、足元がおぼつかないほどにふらつき、徐々に悪化。その2日後に内科を受診し貧血の検査は受けるも異常なし。 その4日後に耳鼻科を受診。聴力や鼓膜に異常なく、メニエルではないと言われた。
 しかし寝ていても動揺感は強く、数日後に頚部に強い不快感を感じ、救急で受診。 CT検査で異常は見られずめまい止めの点滴を受けた。その後、めまいは半減するも、それ以上の改善なく残存し続けた。 この状態で来院。
 初回時の訴えとしては、頚部のうつむき加減で動揺や息苦しさが起こっていた。耳の諸検査では異常がなかったので、 頚性めまいと判断し、治療開始。4回の治療でめまいが完全に消失。コリがひどくなると再発の危険性があるので、 ストレスが過剰にかかった時には注意して、コリがひどくなれば来院されるように説明して終了とした。
 めまいは全てが耳鼻科の範疇ではなく、自律神経性めまい、そしてこの頚性めまいも存在する。 そういう時に的確な鑑別と治療が功を奏する。

4、聴力低下と共に耳鳴も感じ無くなった突発性難聴 39才女性

 来院される8年前、左の突発性難聴を発症し入院加療で聴力は回復し、耳鳴のみ残った。退院後は内服のみで定期通院し、薬も自己管理していた。
 しかし耳鳴がしていると、聴力があることを実感できるので安心していたが、来院2ヶ月前に職場のストレスから耳鳴が徐々に聞こえなくなり聴力も低下。そして内服しても改善がみられず点滴加療や高圧酸素療法も行った。しかし回復せず、当院受診。
 治療2回目で低音域の聴力が少し上がり、耳鳴も微かに聞こえる様になった。治療7回目で完全に耳鳴が聞こえる様になり、病院でも聴力は正常域に戻っているとの事で、治療は終了とした。
<コメント>通常耳鳴りの存在は煩わしいものだが、このような感じ方もある。

5、重度聴力低下からの回復 19才男性
表1 表2 表3 表4
表1 表2 表3 表4

 来院半月前に右の耳鳴りを感じ、その数時間後に回転性のめまいと嘔吐。翌日の耳鼻科の受診では右の聴力が全体的に低下していた。めまいも終息せず、大きな病院に転院入院、9日間のステロイド点滴を行うも、聴力が更に悪化(表1)。退院後すぐに来院され、治療開始。以後速やかに改善が続き(表2、3)、二カ月弱で日常生活に支障がないまでに聴力が回復(表4)。高音域の低下部分も改善させたかったが、ご本人の事情で通院終了となった。
<コメント>若い事と発症後あまり時間が経過していないので、速やかに一定の回復を見る事が出来た。もう少し継続して高音域の改善もできれば、と少し残念であった。

6、顔面神経麻痺の速やかな回復 50才女性

 来院二週間前に右口唇ヘルペス発症、発熱も伴う。近医から総合病院に紹介された時点で、顔面神経麻痺のスコア16/40。服薬するも徐々に悪化し、スコアは12点に低下。この状態で来院された。
 口から水がこぼれたり、閉眼が出来なかったりと生活に著しく支障をきたしていたことや、発症後に時間があまり経過していないこともあり、早期の回復を目指し週に2回の通院を勧めた。その後、きちんと通院され、5回治療後、病院にてスコア32点、8回治療後同じく40点満点の回復となり、丁度1ヶ月間計9回の治療で完治とした。
<コメント>末梢性の顔面神経麻痺は、鍼灸が最も効果を示す疾患のひとつ。協働に注意しながら治療を行い、著効を示す例が極めて多い。今回は口唇ヘルペス後顔面神経麻痺であったが、ハント症候群とは異なるようだ。

7、治療3回目で効果が見られた慢性副鼻腔炎 37才女性

 来院2年前の年末に風邪を引き、近医耳鼻科を受診された。レントゲンにて副鼻腔炎と診断され、1~2カ月クラリスを内服し経過観察していた。しかし、後鼻漏と痰、喉の痛みが強かった。病院を転院し漢方と抗菌剤で経過観察していたが1年経っても改善せず、当院受診。
 耳鼻科受診時に吸入は行っていたが、後鼻漏がひどくなり中止。頭痛や嗅覚異常も無し。
 当院の治療開始3回目に、当初より症状が少し改善していた。常用している漢方も飲み忘れる程だった。6回目来院時、小鼻すぐ横の違和感が残った。症状は1/10改善している。7回目、調子もよく違和感も殆ど無いとの事で終了とした。

8、低音障害性難聴 54才女性

 来院数年前より飲酒後に左耳の詰まり感があったが直ぐに治まっていた。今回の発症では治まらず、左耳の聴力の低下も感じた為、発症4日後に近医耳鼻科受診。「低音障害性難聴」と診断され受診後1週間、薬の服用を続けるも変化無し。来院時には詰まり感、聴力低下、耳鳴りを訴えられた。発症から日が浅い為、症状の固定を回避し、局所の血流を改善する目的で治療間隔を詰めて治療を行った。初回治療後から詰まり感が軽減。2診目直前の耳鼻科でのオージオ測定にて聴力改善、服薬量も減った。4診目で聴力正常域となり、6診目で自覚症状もほぼ消失し、終了とした。

9、治療数回で症状が改善した突発性難聴 45才女性

 来院8日前、左耳にこもり感を感じていたが、肩こりと思い放置していた。翌日朝に左にガーという耳鳴り、つまり感、エンジン音や換気扇の音が響く補充、自分の声が響く自声強調が出現。が、めまいは無かった。その日の内に近医耳鼻科受診し、聴力検査にて左の突発性難聴と診断された。ステロイド点滴を1日とその後は内服(リンデロン、メチコバール、アデホス)を4日間処方された。病院受診後5日目に再受診で聴力検査を受けるが、変化なし。その日1日のみステロイド点滴と内服処方された。3日後、聴力再チェックし、低音部の聴力が上がっていると言われた。しかし、耳鳴とつまり感は残っていた。
 この状態で当院を受診。来院4日後に聴力検査を控えている状態だった。5日に1回のペースで治療を開始。2診目耳鳴が少し小さくなってきたとの事。3診目、耳鼻科で聴力検査をすると、波形が左右とも揃ってきたと言われた。仕事で忙しいと耳鳴アップするが気にならない程度になってきた。5診目、耳鳴1日中気にならない程度まで回復。以前はドライヤーの音がうるさく聞こえていたが、気にならなくなった。7診目、聴力は正常域に入っていたが内服は続いていた。
 10診目、耳鳴は完全に無くなり聴力も回復した為、終了とした。その後も別疾患で通院されていた。

10、聴力低下、諸種自覚症状を伴った突発性難聴 28才女性

 発症6日後に耳鼻科受診で「突発性難聴」と診断。服薬とステロイド点滴をするも変化なく、耳鳴り、聴覚過敏、自声強調、響きを訴えて発症から2週間後に来院。初診時の聴力検査では8kHzと4kHzで重度の聴力低下。日常生活で聞きとりにくさの不便は少ないが、人込みの中での疲れや趣味の音楽で歌うと音が響くのがつらいという事であった。
 鍼治療開始としては発症から日が浅い為に治療ペースを週2回とし、また高音域の聴力回復は時間がかかる可能性を初診時に伝えていた。
 治療3回で耳鳴りはほぼ消失。全自覚症状の気になる程度がピークの3分の1程度まで落ち着いた。治療8回後の耳鼻科での聴力測定では8kHz、4kHz共に改善。担当医からも改善の余地ありと言われたという事だった。それ以降も天候による多少の浮き沈みはあったものの順調に改善。聴力は完全には回復していない状態ではあるが日常生活に支障なく、自覚症状が気にならなくなった為計13回で終了となった。

11、外リンパ瘻術後の聴力改善例 40才女性

 初診10日前、左耳の急な聴力の低下とこもり感、吐き気を伴う眩暈を発症。
 翌日の耳鼻科受診では難聴レベルは中等度であり、「メニエール」と診断された。翌々日、更に聴力の低下を感じ再度耳鼻科受診。その際には高度難聴まで低下しており、診断が「突発性難聴」に変更、直ぐに入院点滴をすることになった。しかし入院日の夕方さらに聴力低下し、発症直前に出産している事からも「外リンパ瘻」の疑いで緊急手術を行った所、内耳窓の穿孔という特徴的な徴候がみられて、診断が確定した。
 退院後速やかに来院。来院前の聴力検査では全域が高度難聴レベルまで低下した状況が続いていた。また当初は自声強調、こもり、響き、他人の声が記号のように聞こえるなどの自覚症状の方が聞こえにくさより気になるという状況だった。発症から比較的早い段階での鍼灸治療スタートであった為、聴力回復と術後損傷組織の早期回復を目的に週2回の来院ペースで治療を行った。治療継続中の検査では125~500㎐が50db以上、1000~2000㎐が30db以上改善し、耳鼻科医からも回復の可能性があると言われた。
 3回目の治療後の検査で低音域回復、高音域はじわじわ改善傾向を示し、6回目の治療後から自覚症状も改善、10回目の治療後には自覚症状を含め全症状が軽減していた。
 計21回の治療で自覚症状と聞こえにくさ、共に気にならないレベルとなり終了した。

12、鍼灸治療開始直後に聴力回復した難聴例 60歳男性

 ある日、電話を受けた際に左耳の聴力低下に気付いた。同日耳鼻科受診にて低音域のみやや低下している点から「低音障害性難聴」と診断。
 5日後の聴力検査では全域が高度難聴レベルまで低下のため、診断が「突発性難聴」に変わり、翌日からステロイド点滴を5日行った。点滴終了時の聴力検査で殆どの音域は回復していたものの1000㎐のみ軽度難聴レベルであり、聞こえの左右差を無くし聴力を完全回復したいとお越しになった。
 7年前に反対の右耳に突発性難聴を発症して以来、左右の耳鳴りをずっと感じておられた。また今回の発症後、左右とも耳鳴りが強くなり、こもり感も加わった。
 当院の治療直後から聞こえの改善の自覚があったため、自身で携帯アプリにての聴力検査をされた所、軽度難聴であった1000㎐も正常になっていた。初診での両頸肩のこりをとる治療が功を奏し右耳の耳鳴りも軽減したため、2診目以降は左右耳鳴り等自覚症状の改善目的に変更。3診目終了時点で全症状が今回発症前のレベルに戻り、直後に耳鼻科で行った聴力検査でも回復が認められた為、計3診で終了となった。

参考ページ
http://hari-9.com/otorhinology/

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