日々の診療の様子をお伝えします
当院には、様々な愁訴をお持ちの方がお見えになる。
そんな中で、免疫に原因がある場合がある。
アレルギー的なものでは、代表例は花粉症。
自己免疫的なものには、関節リウマチや全頭型脱毛症。
残念ながら同種免疫疾患は滅多にお目にかからない。
(当たり前か、、、)
ところで体外授精や顕微授精で出来た授精卵が、
なかなか着床しない場合がある。
2、3年前のある患者さんは4回の初期流産を経て、
同種免疫異常の診断を受けておられた。
ご主人のリンパ球移植の適応となっていた。
その方が、鍼灸を開始してからの次の妊娠で、
見事安定、ご出産に至った経緯がある。
その時に、鍼灸の免疫における作用が、
着床及びその安定に寄与しうることは漠然と感じていた。
その後も良好な胚盤胞であるにもかかわらず、
何度戻しても着床しない方々がある。
β-hCGが二桁しかいかない場合等である。
どうしたものかと悩んでいた。
そんな時、様々な免疫系疾患の治療で奏功した例を考え、
そして共通の治療コンセプトは何であるかと考えた。
特に、自己免疫型脱毛症における局所免疫療法にヒントを得て、
ある方法を免疫異常による着床障害の治療に応用してみた。
すると、、、、
全く同じ時期に採取した胚盤胞を、
1人は1回の移植不成功を経て、
1人は2回の移植不成功を経て、
その後に移植する際に、上記ヒントから導入した方法で、
見事に続いて2人共の妊娠を見ることが出来た。
これは様々な疾患を扱うからこそ出来た発想である。
不妊症の原因は、まさに様々である。
卵質の低下。
それは卵巣の血流量の低下のみならず、卵胞内の栄養不足、
更に卵子の細胞膜の透過性、などにも思いを致さなくてはならない。
着床障害。
これは内膜が厚くならないという簡単な言葉では言い表せない。
厚くならないのはなぜか?
エストロゲン不足。
エストロゲンレセプター不足。
子宮の血行障害。
どれが原因なのか。
さらに上に書いたように、着床障害には、
極めて複雑な免疫反応が関与している。
その免疫の過剰反応に対して、
鍼灸で効率的に免疫寛容を起こすにはどういう方法が良いのか。
そのひとつの答えが、上記に挙げた
「自己免疫疾患としての全頭型脱毛症に対する局所免疫療法」
の応用である。
鍼灸が免疫寛容を起こすことはNK細胞、マクロファージ、サイトカインなどに対する効果を考えれば、説明がつく。
基礎理論、臨床実践、その応用。
それが一定の成果を上げる場合、
その効果は、曖昧な東洋医学理論ではなく、
極めて再現性の高い科学的思考に裏打ちされている。
3人目、4人目と続いてくれることを願うばかりだ。